岡田将生が突きつけた人間の無情さ 『タリオ』セミファイナルは一転シリアスな展開に

『タリオ』第6話はシリアスな展開に

 浜辺美波演じる元弁護士の白沢真実×岡田将生扮する詐欺師・黒岩賢介がバディを組み“復讐代行”を遂げる『タリオ 復讐代行の2人』(NHK総合)。いよいよ最終話まで残すところ1話となった第6話では、クライマックスに向けてこれまでと一味違ったシリアスな展開が待ち受けており、“正義とは一体何なのか?”“ 復讐代行に意義があるのか?”などを問いかけられる回となった。

 今回は、マミクロこと真実と黒岩それぞれに別々に依頼が入る。しかし、それぞれの依頼者の話を聞いているうちに不可解な共通点が浮かび上がってくる。手元に残された傷口などから「連続殺人犯」の可能性が浮上するが、さらにもうひと捻りあり、実際には依頼者同士が殺し合う「復讐の連鎖」が生んだ終わりなき悲劇が描かれていた。

 真実の依頼者・赤川(荒川良々)は、妻を殺されたが警察が十分に捜査してくれないと言い、黒岩の依頼者・青井(丸山智己)は、母親を1年前に殺されていた。青井の母親は赤川の中学時代の担任で、赤川は当時いじめの相談をするも担任が取り合ってくれず自殺未遂までしていた。その恨みから、青井の母親を殺したのだった。

 それに気づいた青井は、同じく大事な家族を亡くす者の気持ちを味わせようと赤川の妻を殺す。互いの居場所を知り抹消するために、マミクロコンビにそれぞれ依頼をしてきたのだった。

 マミクロの調査風景を盗撮していた赤川は、遂に青井の前に姿を現し襲いかかる。自分の自殺未遂の傷跡を見せながら「俺はあの時に殺された。先に殺ってきたのはそっち(青井の母親)だ」というシーンは印象的でリアルだった。

 この末路を知った黒岩の言葉が言い得て妙だった。ハンムラビ法典の「目には目を、歯には歯を」になぞらえながら、「先に片目を潰された側は両目を潰さないと気が済まない。しかもそれで終わりじゃない。両目を潰された側は、復讐するなら両目だけでなく全部の歯が折るくらいしないと気が済まないだろう。人間の復讐心は同じだけじゃ満たされない。やられたことを上回る仕返しをしてようやく気が晴れる。本当に感情に任せることを許したら終わりなく応酬し合って果てしなく拡大していく。それが人間の習性だ」

 確かに本作で描かれてきた復讐代行も、不幸や痛みを比較することはできないものの、相手から大切なものを奪ってきたのは間違いない。作家になる夢のために自分と母親を捨てた父親に対して、自身が圧倒的若さで作家デビューして才能を見せつけることで、父親の生涯の夢を諦めさせた娘の復讐は、重層的でお見事ともいえるし、その分やるせなさも募った。

 そして黒岩が続けた「世界がアンフェアなのは間違いない。ただそれ以上に人間という生き物はアンバランスだ」に対して、真実は涙ながらに「それでも世界は初めからフェアであるべき」だと訴える。巨額詐欺事件に関わっているとされ突然自分の前から姿を消した父親(遠藤憲一)についての無念ややるせなさが連想された。

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