夏ドラマ『半沢直樹』から秋ドラマ『タリオ 復讐代行の2人』まで……2020年は復讐モノ量産?

2020ドラマで復讐を描く理由

 夏クールのドラマが終了したが、『半沢直樹』(TBS系)、『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)、『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)といった、復讐を題材にした作品が多かったのが印象に残っている。

 秋クールでもNHKのドラマ10では『タリオ 復讐代行の2人』、WOWOWではバカリズム脚本のドラマ『殺意の道程』が放送。『ルパンの娘』(フジテレビ系)の続編も、今は没落した名探偵の一族に生まれた女探偵(橋本環奈)が、主人公たちLの一族を見つけだして復讐するということが、物語の大枠となっている。

 それぞれ描かれ方は違うが、“復讐”をテーマにした作品が多いのは、それだけドラマと相性がいいからだろう。

『竜の道 二つの顔の復讐者』(c)カンテレ

 復讐を題材にした物語の多くは、家族や恋人を失った主人公が、正体を隠して犯人に近づき、証拠を見つけ出すというミステリーの構造となる。スパイモノや潜入捜査モノの構造に近いため、正体がバレるか? 犯罪の証拠を見つけられるか? といった緊張感のあるサスペンスが演出しやすい。

 また、その敵は巨大な組織に守られていることが多い。そのため主人公は、復讐相手だけでなく、罪を隠蔽しようとする組織とも戦わねばならない。

 2013年度版『半沢直樹』では、父の工場に対し、貸し剥がしをおこなった銀行と、当時、融資の担当だった大和田暁(香川照之)が半沢(堺雅人)の復讐の相手だった。自殺に追い込まれた父の敵を討つため、半沢は貸し剥がしをおこなった銀行に就職し、「頭取を目指すこと」で復讐を果たそうとする。

『半沢直樹』(c)TBS

 半沢は銀行を憎みながら銀行員となり、内部から体制を変えようとする。その過程で出世争いと派閥抗争に巻き込まれるのだが、半沢は自分に攻撃を仕掛けてき相手には容赦しない。「やられたら、やり返す。倍返しだ」と言って、逆に相手を追い詰める。やがて物語は諸悪の根源である大和田常務を土下座させる姿が描かれた。

 あの場面は、哲学者のニーチェが『善悪の彼岸』(光文社古典新訳文庫)で語った「怪物と戦う者は、戦いながら自分が怪物になってしまわないようにするがよい。長いあいだ深淵を覗きこんでいると、深淵もまた君を覗きこむのだ」(中山元・翻訳)という警句を思い出させる。

『私たちはどうかしている』(c)日本テレビ

 日本の法律において、復讐は民事法では自力救済、刑事法では自救行為に含まれ、「司法の手続きを経ずに、実力で権利回復をおこなうこと」は禁止されている。

 つまり「復讐」は、現代においては法的に許されない行為なのだ。逆に法的に問題さえなければ、銀行がおこなった「貸し剥がし」のような非道な行為も正当化されてしまう。世の中、法律が必ずしも正しいとは限らない。

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