竹内涼真がいま求められている理由がわかる? 『竹内涼真の撮休』が映し出す“竹内涼真らしさ”

『竹内涼真の撮休』は“らしさ”が満載!?

 けれども、今回の『竹内涼真の撮休』は、これまでのところ、そのような緊張感はほとんど見られない。むしろ、これまでの彼の出演作の中で我々が漠然と感じてきた“竹内涼真らしさ”のようなものが、ふんだんに盛り込まれているのだ。ファンに声を掛けられつつも、その微妙な記憶違いに困惑し、それでも親切に対応する竹内涼真。あるいは、生意気な妹に無茶ぶりをされ、結局それに従う竹内涼真。さらには、真面目な顔でもっともらしいことを言ってみるも、「全然意味わかんないよ、お兄ちゃん」と、即座に却下される竹内涼真。ああ、一度観ただけなのに、その姿が脳裏によみがえり、思わずほくそえんでしまうような“竹内涼真らしさ”。その正体とは、一体何なのだろう。

 そして、その果てに思うのだ。そのような“竹内涼真らしさ”を好ましく思う我々は、そこに果たして何を求めているのだろうかと。そう、第2話のタイトルは「『人生』」だった。カレールウを探して街を彷徨うことが、“竹内涼真”の人生なのか。あるいは、自分が思っているようには他人に認知されていないことが、“竹内涼真”の(少なくともこれまでの)人生なのか。否、そうではない。“人生”は、いささか唐突に、思いがけないところからやってくるのだ。

 無事、買い出しを終えて自宅に戻ってきた“竹内涼真”は、“妹”と食卓を囲みながら、他愛ない会話を繰り広げる。あるものを別の角度から眺めてみれば、まったく別の意味を持つことがある。その場合、オリジナリティとは何なのか。たとえどんな“作品”になろうとも、“ジャガイモ”は“ジャガイモ”なのだ。「だったら、世界でひとつだけの“ジャガイモ”になればいい」、「全然意味わかんないよ、お兄ちゃん」、「お兄ちゃんは、やっぱりお兄ちゃんだね」。他愛ないようで、心なしか深遠な意味が隠されているような気がしないでもない台詞の数々。そして最後、兄と妹は、目の前にある“人生”を見つめながら、同じポーズで頬杖をついて、しばし物思いにふけるのだった。

 ちなみに、第2話の監督は、草彅剛主演の映画『ミッドナイトスワン』が好評を博している内田英治が担当。脚本は、映画やドラマを数多く手掛け、近年は映画『風の電話』の脚本を諏訪敦彦監督と共同で手掛けている狗飼恭子が担当している。いずれも、台詞の行間から浮かび上がる、繊細なエモーションに定評のあるクリエイターだ。そんなふたりがタッグを組んで仕掛ける今回のエピソードが打ち放つ、真のメッセージとは何なのだろう。

 それは、多くの人が求めてやまない“竹内涼真らしさ”をさまざまな角度から眺め回すことによって、“竹内涼真”という人間がいまの時代に求められている、本当の理由をあぶりだそうという試みなのではないだろうか。ひとりの役者を通じて、いまの時代的な気分のようなものを捉えようとすること。なるほど、『撮休』シリーズには、このようなアプローチの仕方もあったのか。フォーマットは同じでも、前作とは異なる趣きを早くも見せ始めた『竹内涼真の撮休』。このシリーズが持つ可能性は、思いのほか大きいのかもしれない。

■麦倉正樹
ライター/インタビュアー/編集者。「リアルサウンド」「smart」「サイゾー」「AERA」「CINRA.NET」ほかで、映画、音楽、その他に関するインタビュー/コラム/対談記事を執筆。Twitter

■放送情報
WOWOWオリジナルドラマ『竹内涼真の撮休』
WOWOWプライムにて、毎週金曜深夜24:00〜放送(全8話)
出演:竹内涼真、小池栄子、渋川清彦、藤野涼子、松本穂香、佐野勇斗、佐津川愛美、藤原季節、富司純子、松本まりか、山本浩司、岡部たかし、森川葵、吉村界人ほか
監督:廣木隆一、内田英治、松本花奈
脚本:狗飼恭子、ぺヤンヌマキ、ふじきみつ彦、舘そらみ、松本哲也、玉田真也、竹村武司、首藤凜
音楽:つじあやの
主題歌:平井大「Holiday」(テレビ朝日ミュージック/avex)
制作協力:ホリプロ
製作:「竹内涼真の撮休」製作委員会
(c)「竹内涼真の撮休」製作委員会
公式サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/satsukyu2/

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