『モンスターハンター』は『ソニック』『名探偵ピカチュウ』に続くか ゲーム映画化の歴史を辿る

『モンハン』などゲーム実写映画の歴史を辿る

 『ソニック・ザ・ムービー』でメガホンを取ったジェフ・ファウラー監督は、本作が初の長編監督だが、特殊視覚効果の分野で17年のキャリアを持つ。ソニックを実写化するうえでは、まさに最適な人物だった。そんな彼は、ソニック・キャラクター・スーパーバイザーの飯塚隆に会い、さまざまなシチュエーションでのソニックの反応や、ソニックのキャラクターらしさに関してアドバイスを受けたことを明かしている。つまり、往年のソニックファンも満足させるものになっているのだ。デザインも、実景と俳優陣の演技が違和感なく共存するキャラクター造形が見事で、ストーリーも肩の凝らないファミリームービーとして楽しめる。さらにドクター・ロボトニック役のジム・キャリーの怪演も魅力の一つになっていた。

『ソニック・ザ・ムービー』(c)2020 PARAMOUNT PICTURES AND SEGA OF AMERICA, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

 今後成功が期待される作品としては、『モンスターハンター』が挙げられる。本作は、映画『バイオハザード』シリーズで監督を務めてきたポール・W・S・アンダーソン監督が、ゲーム版『モンスターハンター』シリーズのディレクターの藤岡要やカプコンと相談しながら進めていったもの。映画のストーリーは、『モンスターハンター:ワールド』の直後から『モンスターハンターワールド:アイスボーン』までの間に設定。アンダーソン監督は、小道具や衣装部門からVFXチームまで、映画『モンスターハンター』チーム全体に、映画のすべてがひとつひとつできる限りゲームに近くなるように指示したという。ビジュアルデザインからサウンドデザインまで、モンスターの最終バージョンは藤岡の見識を取り入れ「かなり細部まで忠実に」なったと明かしている。ビデオゲームの実写化にありがちな、大きなスタジオの制作に止まらず、実際にロケーション撮影を行っていることも重要だ。製作陣が行った南アフリカの撮影ロケーションは、変化に富んだ環境が豊富にあり、アンダーソン監督は「岩場やジャングルのように植物が繁茂した場所、そして地下に出来た不気味な洞窟が映画に登場する」と語っている。

『モンスターハンター』(c)CONSTANTIN FILM Produktion Services GmbH

 振り返ってみるとビデオゲームの実写化の成功には、映像の進歩も要因としてありそうだ。映画『ソニック・ザ・ムービー』などを手がけたビジュアル・エフェクトの会社Industrial Pixel Visual Effects、『名探偵ピカチュウ』のMoving Picture Company、『ランペイジ 巨獣大乱闘』のWETA Digital、『トゥームレイダー ファーストミッション』のSanline VFX、『モンスターハンター』のMr. X、映画『アンチャーテッド』のDouble Negativeなどのビジュアル・エフェクト会社の台頭がゲーム実写化にもたらしている影響は大きいだろう。

 また近年では、こういったビデオゲームの実写映画化作品は、IMAX 3D、MX4D、4DXなど異なった鑑賞形態で鑑賞できるようになり、ビデオゲームをプレイしているような体感を味わうことができる。技術の進歩により、今後もビデオゲーム実写化、そしてそれによる優秀な作品は増えそうだ。

参考

https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_films_based_on_video_games
https://www.guidingtech.com/62684/top-video-games-turned-into-movies/
https://screenrant.com/why-video-game-movies-adaptations-fail/
https://editorial.rottentomatoes.com/article/10-awesome-video-games-that-were-made-into-terrible-movies/
https://www.gamersdecide.com/pc-game-news/21-video-games-that-they-made-into-movies
https://www.cinemablend.com/new/5-Big-Reasons-So-Many-Video-Game-Movies-Have-Failed-124247.html
https://jp.ign.com/nintendo/41425/news/

■細木信宏/Nobuhiro Hosoki
海外での映画製作を決意し渡米。フィルムスクールに通った後、テレビ東京ニューヨーク支局の番組「ニュースモーニングサテライト」のアシスタントとして働く。現在はアメリカのプレスとして働き13年目になる。

■公開情報
『モンスターハンター』
2021年3月26日(金)全国公開
監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン
出演:ミラ・ジョヴォヴィッチ、トニー・ジャー、ティップ・“T.I.”・ハリス、ミーガン・グッド、ディエゴ・ボネータ、山崎紘菜、ロン・パールマン
原作:『モンスターハンター』(カプコン)
製作:コンスタンティン・フィルム、テンセント・ピクチャーズ、東宝
配給:東宝=東和ピクチャーズ共同配給
(c)CONSTANTIN FILM Produktion Services GmbH
公式サイト:monsterhunter-movie.jp

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