マーク・ラファロ主演作からジョーダン・ピール最新作まで! 識者が語り合う2020年の海外ドラマ【後編】

2020年の一押しは? 海外ドラマ座談会【後編】

今一番の注目作『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』

――最近始まった新作について……今、いちばんの注目作と言えば、ジョーダン・ピールとJ・J・エイブラムスが製作総指揮を務める『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』(HBO)だと思いますが、こちらはもうご覧になられましたか?

『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』

今:私は3話まで観ました。すごく面白いと思うし、ホントすごいなって思うんですけど、ここまで行くと、もうちょっと私の手には負えないといいますか(笑)。H・P・ラヴクラフトについては、全然素養がないので。ただ、今のところ、そういうことを知らなくても、十分楽しめる作品になっているとは思いました。

――こちらは、田近さんおすすめの一本でもありますが。

田近:そうですね。このドラマって2話ぐらいで一瞬「これで終わりかな?」って思うじゃないですか。だけど、そこからまた新たな話が続いていく構成が、面白いなと思っています。キャラクターは同じですけど、ひとつのラインだけのストーリーじゃないというか、展開が結構速くて、なおかつ何個かの話に区切られているので、ずっと飽きずに観ることができるんです。まあ、ジョーダン・ピールがこの路線をまだ続けたいんだなっていうのは、改めて思いました(笑)。

――ジョーダン・ピール監督の映画『ゲット・アウト』、『アス』の延長線上にあるドラマであることは間違いないですよね。

田近:なので、ジョーダン・ピールの映画が好きだっていう人は、きっと楽しめると思います。というか、今回はラヴクラフトということで、そこにファンタジー要素も結構入っていて……人種の問題を中心にしながらも、もうありとあらゆるものをぶっ込んだなっていう(笑)。

キャサリン:(笑)。私はホラーがあまり得意ではないんですけど、ジョーダン・ピールの過去作が大丈夫な人は、きっと楽しめるんじゃないでしょうか。あと、今回はファンタジー要素が結構あるので、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』ぐらいのビックリ加減が大丈夫な人も、きっと楽しめるっていう。それも無理という人には、結構厳しいシーンもあって……ただ、ちょっと意図的に笑わせにきているようなところもあるような気がするんですよね。

田近:それは僕も思いました(笑)。

『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』

――ジョーダン・ピールはコメディ出身ということもあって、やっぱりユーモアのセンスがあるんですよね。

キャサリン:だから私は、ジョーダン・ピールの過去作よりも、キー&ピール時代のコントを思い出すようなところがあったんですよね。くるぞ、くるぞ、きた!とか、このネタ、キー&ピールでやってたじゃんみたいな(笑)。だから、路線としては変わらず、やりたいことを、すごくお金をかけてやっているのかなっていう。あと、このドラマは、結構ベタなホラーシーンも多かったりするんですけど、それまでのホラーって、ほとんど白人が主人公だったと思うんですよね。なので、そういった面でもすごく新しいというか、私でさえ新しいと思ったので、アメリカでは相当画期的なんだろうなって思いました。

今:そうですよね。『プロット・アゲンスト・アメリカ』のリンドバーグやルーズベルトじゃないですけど、ラヴクラフトもいろいろ調べていくと、実は人種差別的な思想を持っていたりとかして……まあ、いろいろ強烈なドラマであることは間違いないですよね。

田近:あまり大真面目に観過ぎても、ダメな作品なのかなっていう気がしています。「何か出てきた!」とか「爆発した!」とか、まずはそれぐらいの感じで観ればいいのかなと(笑)。そこらへんは、ちゃんとエンターテインメントに寄った作品になっていると思うんですよね。

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