スピンオフドラマ熱望! 複数のヒーローたちが輝いた『半沢直樹』

複数のヒーローたちが輝いた『半沢直樹』

複数の登場人物にファンがつく作品は強い

 これだけの個性的な登場人物が顔を揃えているドラマは滅多にない。キャスティングの豪華さ、人数の多さは通常のドラマを軽く凌駕しており、大河ドラマ、朝ドラに次ぐレベルだと言える。大ヒットドラマの待望の続編であり、局の看板である「日曜劇場」だからこそ実現したのだろう。スピンオフドラマが軽く5~6本は作れそうな顔ぶれだし、ぜひとも実現してほしい(誰のスピンオフドラマが観たいか、『半沢直樹』ファンにアンケートを取ってみたい)。

 しかも、単にキャストが豪華なだけではなく、それぞれに見せ場があり、それぞれが視聴者の注目を集め、場合によっては登場人物に熱いファンがついているドラマは稀有である。視聴者たちは、自分に近い年齢や立場の登場人物に感情移入したり、自分とかけ離れた登場人物を憧れのまなざしで見たり、彼らの言動に腹を立てたり、応援の声を送ったりしていた。

 50話前後ある大河ドラマや15分ながら130話前後ある朝ドラならともかく、全10話の連続ドラマでそのようなことが可能になったのは、長大な原作を整理し、登場人物それぞれに見せ場を与えた丑尾健太郎をはじめとした脚本家チームの功績が大きい。また、短い出番を120%、150%の力で演じることができる力量のある俳優たちを、知名度に頼らずに集めた伊與田英徳プロデューサーの手腕も欠かせない。先に「キャストが豪華」と書いたが、それまで知名度がなかった俳優でも『半沢直樹』に出ることで「豪華キャスト」の仲間入りをするケースが多々見られる。

 複数の登場人物がそれぞれ活躍し、それぞれにファンがつく作品は強い。近年では海外テレビドラマ、2.5次元と呼ばれる舞台作品、『仮面ライダー』シリーズなどがそうだろう。『ドラゴンボール』や『ONE PIECE』のような長編コミック(アニメ)もそうだし、古くは『忠臣蔵』などのオールスター時代劇、歌舞伎の顔見世興行なども複数のヒーローが輝くコンテンツだった。

 とはいえ、人気や知名度のある役者を揃えただけでそうなるとは限らない。脚本、演出、演技力、予算……すべてが揃ったとき、『半沢直樹』のように複数のヒーローが輝く作品が出来上がるのだろう。『半沢直樹』の新しいシリーズが制作されるかどうかはわからないが、またこのような日本中を巻き込んで盛り上がるような作品が観てみたいと願っている。

■大山くまお
ライター・編集。名言、映画、ドラマ、アニメ、音楽などについて取材・執筆を行う。近著に『バンド臨終図巻 ビートルズからSMAPまで』(共著)。文春オンラインにて名言記事を連載中。Twitter

■配信情報
日曜劇場『半沢直樹』
Paraviにて全話配信中
出演:堺雅人、上戸彩、及川光博、片岡愛之助、賀来賢人、今田美桜、池田成志、山崎銀之丞、土田英生、戸次重幸、井上芳雄、南野陽子、古田新太、井川遥、尾上松也、市川猿之助、北大路欣也(特別出演)、香川照之、江口のりこ、筒井道隆、柄本明
演出:福澤克雄、田中健太、松木彩
原作:池井戸潤『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』(ダイヤモンド社)、『半沢直樹3 ロスジェネの逆襲』『半沢直樹4 銀翼のイカロス』(講談社文庫)
脚本:丑尾健太郎ほか
プロデューサー:伊與田英徳、川嶋龍太郎、青山貴洋
製作著作:TBS
(c)TBS

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