高城れに、『彼女が成仏できない理由』で見せる“演技派女優”の顔 ももクロとは違う魅力を発揮

『彼女が成仏できない理由』高城れにの魅力

 ドラマを観てまず驚かされたのが、玲がまるで女優の板谷由夏を彷彿とさせるような“大人の女性”だということ。最初は高城と気づかなかった人も多いのではないだろうか。明るいイメージのアイドル・高城れにと切り離し、感情を抑えた演技が、女優としてアンニュイな新たな魅力を引き出している。『幕が上がる』でも感じたが、その笑顔の裏側を深読みしたくなる高城の存在感が、悲しい過去を抱えたキャラクターに見事に反映されているように感じる。

 また、常に部屋でゴロゴロしている幽霊という設定も興味深い。見方を変えれば、アイドルも幽霊も非現実的な存在であり、そうした部分は実際の高城のキャラクターが活かされていると言える。以前、高城には特技を「幽体離脱」と言う時代があり、玉井詩織に魂が乗り移ったエピソードなど、ファンの間では語り草となっているが、本作で幽体離脱でエーミンに憑依する、高城が得意(?)としているシーンがあるのも、本作にハマった理由の一つかもしれない。

 前回の第3話では、玲が、エーミンが影響を受けた漫画『氷の武将』の作者だったということが明らかに。ただその漫画は玲が死んだ後も連載は続き、玲のアシスタントだった山田(村上穂乃佳)がゴーストライターとして描いているという、『ミリオンジョー』的な展開に。玲も編集者・中路(和田正人)を憧れの存在だったことを思い出し、涙するなど、これまでのひょうひょうとしたキャラクターから徐々に感情的になり、演技も変化を見せている。親しくなればなるほど真実が解明され、悲しい現実が迫ってくる。

 制作総括の三鬼一希は「愛おしい距離感、切ない距離感を味わっていただけたら」と語っていたが(参照:森崎ウィンが留学生、高城れにが幽霊に NHKよるドラ『彼女が成仏できない理由』9月放送へ)、おそらく成仏してエーミンとの別れが訪れることは予想でき、切ないエンディングに向かうはず。哀しい場面こそ高城の笑顔がきっと映えるだろうが、女優・高城れには最後にどんな表情を見せるのか。

 アイドルが俳優の道を選んだとき、これまでのイメージを払拭できるかが一つの壁となることは多いが、高城について言えばその壁は超えたも同然だ。初主演でこれだけ自然体の演技を見せることができるのは、新しい“演技派女優”の誕生と言えるだろう。佇まいもそうだが、台詞回しや、精神面で勝負するような演技は、戸田恵梨香を彷彿とさせ、彼女のように個性の強い役から静かな役まで、幅広い演技が期待できる女優になっていくのではないだろうか。『彼女が成仏できない理由』は、そんな高城の女優としての本領が発揮された作品だ。

■放送情報
よるドラ『彼女が成仏できない理由』
NHK総合にて、毎週土曜23:30〜23:59放送【全6回】
出演:森崎ウィン、高城れに(ももいろクローバーZ)、和田正人、村上穂乃佳、中島広稀、 白鳥玉季、高橋努、ブラザートム、古舘寛治ほか
作:桑原亮子
制作統括:三鬼一希
プロデューサー:増田靜雄
音楽:トクマルシューゴ、王舟
演出:堀内裕介、新田真三
写真提供=NHK

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