『DESTINY 鎌倉ものがたり』で純朴な堺雅人を堪能! 『半沢直樹』とは異なる全力の姿

『DESTINY 鎌倉ものがたり』で純朴な堺雅人を堪能! 『半沢直樹』とは異なる全力の姿

 “半沢歌舞伎”と言われるほどの顔芸のオンパレード、勧善懲悪で毎話スカッとする展開が病みつきになると話題の『半沢直樹』(TBS系)。最終話放送直前までは見逃し配信も一切なし(最終話放送1週間前でようやく全話一挙配信開始という仕掛け)、リアタイ放送とダイジェスト版のみの放送で、日曜夜にお茶の間で家族皆をテレビの前に引っ張り出し、視聴者がTwitterでツッコまずにはいられなくなるような演出、名言を毎話散りばめることで、結果トレンド入り常連、視聴率20%超えを叩き出すという展開までを含めた壮大な“半沢劇場”に、気づけば我々も担ぎ出されてしまっている、そんな国民的ヒット作品だ。

『半沢直樹』(c)TBS

 この大ヒット作の主人公・半沢直樹を演じる堺雅人は、特に続編から多数登用された歌舞伎役者たちの中にあっても全く霞むことなく、より強い存在感を放っている。堺は安定的な美形ではあるものの、その顔の造形だけでは印象に残りいくいだろうところを、あの卓越した「表情の作り込み」、“こんなにも表情筋とは動くものなのか”と驚かされるほどの「表情の可動域」が凌駕して補っても余りあるほどの域にまで見事昇華させられている。

『半沢直樹』(c)TBS

 「笑いながら泣く」「笑いながら怒る」といった合わせ技ができるのも彼の唯一無二たる所以だろう。元々の優しすぎる表情もあってか、「笑顔で喜怒哀楽全てを表現できる」と言われているのは彼くらいではなかろうか。この特性が遺憾なく発揮されているのが半沢直樹とも言える。国家や銀行など巨大組織の闇を暴く度、それを前に絶望していった先人たちのやりきれぬ思い、無念さ、報われなさ、折れそうになっても諦めきれぬ想い、使命感など、同時多発的に次々と湧き上がってくるのであろう感情を、曲者たちと対峙しながら吐露しているのは、何もその長回しのセリフだけではない。感情をそのままぶつけずに努めて落ち着いて話そうとする抑圧的な声色、そしてその何とも言えない表情にある。不正を暴けて良かったというような表面の分かりやすい想いだけでなく、暴いても暴いてもなくならぬ癒着や不正などに心砕かれそうになりながらも、それでも自身の信条とするバンカーであらんとするために悲しみや痛みを伴いながらも向き合う覚悟を持った半沢の「祈り」でもあり、「誓い」にも似た想いが投影されているように感じられる。

 1つの表情に幾重もの感情を代弁させられるが故に演じられたのが、映画『ツレがうつになりまして。』での鬱病を患った会社員・幹男役であり、『篤姫』(NHK総合)での13代将軍・徳川家定役だったのではないだろうか。奇しくもどちらも宮崎あおいとの共演作だが、“頑張りたいのに無気力”というもどかしく苦しい幹男の心の内や自身の存在への心許なさ、自責の念などがよく捉えられていた。また、ひょうひょうとしながらも後継問題に悩まされ、うつけの振りをして生き延びる家定の切なさ、寝所で篤姫だけに見せる聡明な素顔と、お付きの者の前でのうつけっぷりという、鮮やかな演技の切り替えには目を見張るものがあった。何を考えているのか表情からは一筋縄では読み取れない、本音がどこにあるかわからない憂いを帯びた役どころに見事マッチしている。そして、この片鱗は早くも同じくNHK大河ドラマ『新選組!』での山南敬助役の時から光っていた。

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