『DESTINY 鎌倉ものがたり』で純朴な堺雅人を堪能! 『半沢直樹』とは異なる全力の姿

『DESTINY』で純朴な堺雅人を堪能!

 ちなみに、鬱病患者役を演じたかと思いきや、それに相対する精神科医役を『Dr.倫太郎』(日本テレビ系)での日野倫太郎役で、世継ぎ問題に苦悩する将軍を演じれば、今度は同じ悩みを抱えた将軍に仕える側を映画『大奥 ~永遠~[右衛門佐・綱吉篇]』の右衛門佐役で演じてのける。

 また、堺の“存在としてのまともさ”が功を奏する場面が多々ある。『半沢直樹』しかり、『リーガルハイ』(フジテレビ系)で演じた非常にキャラの立った主人公、偏屈で毒舌な弁護士・古美門研介しかりだが、“ふざけた設定”の作品によく境が抜擢される理由として、その設定をも超越してしまえる彼の揺るがぬ“まともさ”が挙げられるように思える。通常あり得ない設定であっても、彼の存在としての“まともさ”“真面目さ”“実直さ”がそこに加わると、現実世界との架け橋となり一気にリアル感が出てしまうのである。

『DESTINY 鎌倉ものがたり』(c)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会

 これは9月25日の『金曜ロードSHOW!』(日本テレビ系)で放送される『DESTINY 鎌倉ものがたり』にも言える。鎌倉に暮らすミステリー作家・一色正和役を演じ、妻の亜紀子(高畑充希)と共に魔物との怪事件に巻き込まれていくのだが、この突拍子もない舞台設定も堺が取り組むことで主人公の純朴さが上回り、観る者にある種の切実さを持って受け入れさせることができるのだからすごい。

 また、個人的には半沢直樹役で見せる“覇気の塊”とは正反対の、売れない貧乏役者・桜井役を演じる『鍵泥棒のメソッド』での、『半沢直樹』同様、不本意ながら互いの利害が一致し仕方なく手を組むことになる堺と香川照之(殺し屋のコンドウ役)の息の合った、その中に“信頼関係”まで透けて見えてしまうような掛け合いも見ものである。堺雅人を中心に据えることで可能になっている世界観を『DESTINY 鎌倉ものがたり』、『半沢直樹』最終回で余すことなく堪能し尽くしたい。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『DESTINY 鎌倉ものがたり』
日本テレビにて、9月25日(金)21:00〜23:24放送
出演:堺雅人、高畑充希、堤真一、安藤サクラ、田中泯、中村玉緒ほか
監督・脚本・VFX:山崎貴
原作:西岸良平
音楽:佐藤直紀
(c)2017「DESTINY 鎌倉ものがたり」製作委員会
公式サイト:https://kinro.jointv.jp/

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