福島三羽ガラス、レコードデビューへ 『エール』が描く戦時下の音楽への向き合い方

福島三羽ガラス、レコードデビューへ 『エール』が描く戦時下の音楽への向き合い方

 国防婦人会が発足し、日々の暮らしにも戦争の影が濃くなっていた時代。『エール』(NHK総合)第72話では、戦時下の音楽への向き合い方が描かれた。

 古山家を訪れた関内智彦(奥野瑛太)は、裕一(窪田正孝)に作曲を依頼する。智彦が所属する陸軍馬政課で、愛馬精神を啓蒙する映画を制作することになったのだ。タイトルは『暁に祈る』。裕一は、作詞家と歌手を選ぶことを条件に仕事を引き受ける。

 裕一の念頭にあったのは、鉄男(中村蒼)と久志(山崎育三郎)。「福島三羽ガラス」でレコードを出すという夢がついに実現することになった。実家が魚屋で、馬には「あんまし縁がねえ」と話す鉄男は、書き上げた歌詞を上官の元に持参するが……。

 戦時下で国民にも戦争協力が求められた当時、すべてが「お国のため」のという尺度で測られ、華美な装いや化粧も自粛の対象となった。音楽も例外ではなく、職業作曲家も戦時歌謡の作曲が中心になった。「露営の歌」が大ヒットした裕一に、軍人の智彦が作曲を依頼するのはごく自然な流れと言える。智彦の妻である吟(松井玲奈)も、妹の音(二階堂ふみ)に「今はお国の非常時」と話す。吟の言う「やるべきこと」とは、出征兵士の見送りなど“銃後”の務めであり、吟から見れば、音楽教室は「のんき」で時代錯誤なものに見えたのだろう。

 音楽を含む文化は、平和な土壌で花開くものだ。音楽よりも「お国のため」と言う智彦や吟の姿が異常なものに感じられるのは、私たちが平和な時代に生きているからにほかならない。文化全般が窮屈な扱いを受けていた時代に、音楽の本来のあり方を示していたのが音の音楽教室だった。

 音がはじめた音楽教室は、恵(仲里依紗)の描いたポスターの効果もあって近所の子どもたちが集まってくる。そこには梅根弘哉(外川燎)の姿も。音程を外してばかりで教室をやめようとする弘哉に、裕一はハーモニカをプレゼントする。また、一緒に歌いたがらない華(田中乃愛)を、音は「そのうちやりたくなる時が来るかもしれない」と広い心で受け止める。音楽は誰かを疎外するものではなく、また強制するものでもない。だからこそ、人を笑顔にすることができるのだ。

 とはいえ、小さい頃から音楽に触れてきたはずの華が歌いたがらないのは、何か理由があるように思われる。母のトキコ(徳永えり)に連れられてきた弘哉も、何か事情を抱えている雰囲気。音楽教室をめぐって親子のドラマがはじまりそうだ。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、中村蒼、山崎育三郎、松井玲奈、奥野瑛太、古田新太ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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