『事故物件』大ヒットスタート! いよいよ日本でも90年代以来のホラーブーム到来か?

日本でも90年代以来のホラーブーム到来か?

 先週末の動員ランキングは、『事故物件 恐い間取り』が土日2日間で動員26万3000人、興収3億5800万円をあげて初登場1位となった。オープニング3日間の累計は動員34万3000人、興収4億6500万円。前週初登場1位だった『糸』の初週の週末興収と比較しても、『事故物件』の成績は153%という目を見張るもの。観客層が比較的リスクの低い(が故にリスク意識も低い)10代、20代が中心の作品とはいえ、新型コロナウイルスの影響がまだ完全に払拭できない時期にあって、これは快挙と言っていいだろう。

 今年に入ってから、『犬鳴村』、『ミッドサマー』と日米ホラー作品が異例のロングヒットとなったことについては以前の本コラム(参考:日本のホラー映画興行に異変? 『犬鳴村』と『ミッドサマー』、日米異世界ホラーが同時ヒット)でも取り上げたが、今回の『事故物件』の大ヒットは引き続きホラーのジャンルとしての引きの強さを証明した。『IT』や『ゲット・アウト』やNetflix『ストレンジャー・シングス』の大ヒットによって新たな観客層を開拓したことで、今やホラーがすっかりメインストリームの人気ジャンルとなっているアメリカから数年遅れて、いよいよ日本でも何度目かの本格的なホラーブームが到来したのかもしれない。

 というのも、同じ松竹配給、同じジャニーズ事務所所属のタレント(今や滝沢秀明副社長ですが)が主演、そしてホラー映画としては間口の広いライトなテイストが特徴のブラジリィー・アン・山田が脚本に参加した作品として、前作的な位置付けが可能な2017年公開の『こどもつかい』の時とは、世間的な盛り上がりも違って、それは約2.5倍の初週成績というかたちで数字でもはっきりと表れているからだ。本作に主演した亀梨和也の集客力を見くびるわけではないし、映画出演作としては前作となる『美しい星』に続いて、今回も役柄通りどこからどう見ても「売れない芸人」にしか見えないという素晴らしい演技をみせているが、本作の成功は企画の勝利であり、さらに言うなら2020年の日本においてホラーというジャンルに追い風が吹いていることを示している。

 さて、こうなると期待してしまうのは、1998年の『リング』で火がついて、2003年の『呪怨2』あたりまで続いたJホラーブームの再来である。ホラー映画は、少ない製作費、そして芸能プロダクションが売り出し中の新人の受け皿という点においても、近年勢いのなくなったティーンムービーの代わりとなる条件は十分だ。東映の『犬鳴村』は早くも「実録!恐怖の村シリーズ」としてシリーズ化されることが発表されているが、『リング2』(と『死国』の併映)で1999年当時配給収入21億円(興行収入換算で約40億円)という実績のある最大手の東宝も、近年の盛り上がりに触発されて参入してくる可能性もあるかもしれない。

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