『事故物件』大ヒットスタート! いよいよ日本でも90年代以来のホラーブーム到来か?

日本でも90年代以来のホラーブーム到来か?

 しかし、ホラー映画好きとして懸念していることもある。近年、多くの才気走った若い映画作家を輩出してきた海外のホラー映画界と比べて、今のところ日本では作り手の世代交代があまり見られないのだ。『犬鳴村』の監督は『呪怨』シリーズの清水崇。『事故物件』の監督は『リング』シリーズの中田秀夫。今年の夏に話題となったNetflix『呪怨:呪いの家』における三宅唱監督の起用は慧眼ではあったが、三宅唱は継続的にホラー作品を手がけるタイプの映画作家だとは思えないし、同作は1998年版『リング』の脚本を手がけ、2003年版『呪怨』の監修を務めた、高橋洋脚本の色が非常に濃い作品でもあった。おそらく今後しばらく、海外のホラー映画の集客状況は日本国内でも好転していくはずだが、日本映画界がかつてのJホラーブーム期のような活況となるためには、ジャンルを背負う気概を持った若い世代の映画作家の登場が不可欠だろう。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「装苑」「GLOW」「キネマ旬報」「メルカリマガジン」などで批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『事故物件 恐い間取り』
全国公開中
出演:亀梨和也、奈緒、瀬戸康史、江口のりこ、木下ほうか、MEGUMI、真魚、瀧川英次、加藤諒、坂口涼太郎、中田クルミ、団長安田、クロちゃん、バービー、宇野祥平、高田純次、小手伸也、有野晋哉、濱口優
原作:松原タニシ『事故物件怪談 恐い間取り』(二見書房刊)
監督:中田秀夫
脚本:ブラジリィー・アン・山田
音楽:fox capture plan
企画・配給:松竹
制作プロダクション:松竹撮影所
(c) 2020「事故物件 恐い間取り」製作委員会
公式サイト:movies.shochiku.co.jp/jikobukken-movie
公式Twitter:@jikobukken2020

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