医者と看護師、患者たちの個性が光る Netflixドキュメンタリー『スキン・ディシジョン』が面白い

娯楽番組の良作『スキン・ディシジョン』

 ちなみに私の美容知識は限りなくゼロに近い。こだわりも少なく、せいぜい洗顔はメンソレータムの洗顔剤が最強だと思っているくらいだ(あとはニベアの青缶って便利だなと30歳を超えたあたりに知りました)。そんなわけで正直言って、この番組の中で飛び交う美容系の専門用語の大半は初めて触れるものだったし、レーザー治療の原理は観終わった今も謎のままである。しかし、観ている間は何となく観ることができてしまった。それはナザリアン先生とナース・ジェイミーが「楽しそう」だからだろう。何かの専門家やマニアが出てきて、熱っぽく語るさまは、それだけで楽しい。本作はNetflix文法に則った番組だから、トゥン(↑)トゥン(↑)パッ(↓)パッ(↓)パッ(↓)みたいな軽快なEDMをバックに、テンポのよい編集、スタイリッシュなセットなどなど、Netflix番組の定番が揃っているが、どこかに『タモリ倶楽部』的な要素を感じてならない。美容に興味がない人でも、マニアの熱いこだわりを観たい人なら楽しめるはずだ。

 番組の冒頭に注意書きが入るが、本作はあくまで娯楽・バラエティ番組であって、「医療」の番組ではない。あくまでナザリアン先生とナース・ジェイミーという圧の強いコンビの立ち振る舞いと、常に想定以上を目指すプロフェッショナルな仕事ぶり、そして容姿の悩みを解決した患者たちの笑顔を楽しむ番組だ。手術シーンや患者たちの過去など、痛々しい部分はあるが、圧が強くて頼もしいコンビのおかげで、最後には爽やかな気分になれる。そして……思えば私は、容姿に無頓着な人生を送ってきた。どこかで自分を大切にしないというか、どうでもいいと思っていたのかもしれない。これはいかん、とりあえずスネ毛を永久脱毛しよう……そんなふうに自分も何か変化しないととと思えてくる、リアリティ番組の良作だ。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■配信情報
『スキン・ディシジョン:お肌の悩みをプロが解決』
Netflixにて配信中

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