必殺技やコスチュームがカギ? 『ヒロアカ』『スパイダーマン』『るろ剣』などにみるヒーロー論

必殺技やコスチュームがカギ? 『ヒロアカ』『スパイダーマン』『るろ剣』などにみるヒーロー論

 そして、「コスチューム論」。これは、日本の伝統的な「変身」文化と、アメコミにおける「着替える」文化の違いがあるように思う。日本の作品では、変身・あるいは変化することが多い。『仮面ライダー』に『ウルトラマン』、『BLEACH』に『美少女戦士セーラームーン』……主人公がヒーローになる際に、平常の姿とは異なる状態に「変わる」のが、日本のヒーロー作品の花道だ。『ONE PIECE』の「ギア」、『ドラゴンボール』の「スーパーサイヤ人」も、この系譜にあるといえよう。

『ヴェノム』

 それに対して、『スパイダーマン』や『バットマン』などでは、正体を隠すためもあるが、コスチュームを着ることが、ヒーローへのスイッチとなる。ハルクやソーは「変化」だが、アイアンマンもキャプテン・アメリカもコスチュームを着て、モードの切り替えを行う。『ヴェノム』は「変身」に近いが、どこか二人羽織のように描かれており、これも「着替える」の発展形といえるかもしれない。

 ベースは普段のキャラクターのまま「着る」文化と、ベースから変わる「変身する」文化。どちらもヒーローを描いてはいるが、アプローチの違いが面白い。そして『ヒロアカ』では、どちらもミックスした形態を用いている。

『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』(c)2019「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (c)堀越耕平/集英社

 まず、「コスチュームを着て街に出ればヒーローだ」というセリフがある通り、コスチュームはプロヒーローのみに許された特別な「ユニフォーム」であり、着ることがヒーローの証、という設定が敷かれている。そのうえで、主人公・緑谷出久は「ワン・フォー・オール フルカウル」という技を取得することで、「変身」に近い姿になっていく。コスチュームを着てヒーロー活動を行い、さらにそこから変身する、という2段構えになっているのだ。

 また、ヒーローの代名詞ともいえる「マント」についても、「マントで体を隠すことで動きを見えなくさせる」戦術や、「ヒーローがマントを羽織るのは! 痛くて辛くて苦しんでる女の子を包んであげる為だ!」というセリフに象徴されるような、救助や救命のアイテムとしての役割も付加しており、細部までみていくことで独自の「コスチューム論」が浮かび上がってくる。アイアンマンのパワードスーツのように、歴戦の中でキャラクターたちのコスチュームがアップデートされていく、という展開も熱い(コスチュームやサポートアイテムを作る技術者についても、細かく言及される)。

『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(c)和月伸宏/集英社 (c)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

 ちなみに、『ヒロアカ』だけでなく、実写映画『るろうに剣心』のアプローチも実に意義深い。原作では、剣心は登場時からトレードマークといえる赤い着物を着ているが、実写映画ではあえて地味な着物を着せて登場させ、ファンにかすかな違和感を与える演出をとっている。

 しかしこれが、剣心が中盤で赤い着物に「着替える」ことで、「ヒーローとしての覚醒」を促すトリガーとして使われているのだ。このロジックは、上に挙げたようなアメコミ的感覚に近く、本作を現代の感性で実写化するにあたって追加された、粋な計らいといえるだろう。

 また余談だが、「変身」でなく「着替える」動きは、“支持者”を増やすことにもなっていく。『アメイジング・スパイダーマン2』のラストで描かれた感動的な「ちびっこスパイダーマン」のシーンは「着替えてヒーローになる」だからこそ描けたものだし、『ジョーカー』でピエロマスクのフォロワーが増えていくおぞましいシーンも、共通点を感じさせる。こちらは逆に、「着替える」文化ならではの特長ではないだろうか。

 長々と書いてきたが、多様なヒーローの在り方・描かれ方がミックスされてきた現在は、制作国を問わず、“共通認識”が生まれる土壌が育ってきているフェーズともいえる。その好例が『ヒロアカ』であり、今後その動きは加速していくだろう。ヒーローたちの未来から、目が離せない。

■SYO
映画やドラマ、アニメを中心としたエンタメ系ライター/編集者。東京学芸大学卒業後、複数のメディアでの勤務を経て、現在に至る。Twitter

■リリース情報
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ:ライジング』
Blu-ray&DVD発売中
・Blu-rayプルスウルトラ版:7,800円(税別)
・DVD プルスウルトラ版:6,800円(税別)
・Blu-ray通常版:4,800円(税別)
・DVD通常版:3,800円(税別)
原作・総監修・キャラクター原案:堀越耕平(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
アニメーション制作:ボンズ
発売・販売元:東宝株式会社
(c)2019「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE」製作委員会 (c)堀越耕平/集英社

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