川口春奈の名場面も再び! 『麒麟がくる』織田家と斎藤家の亀裂が招いた“動乱”
NHKの大河ドラマ『麒麟がくる』の放送再開までいよいよ2週間を切った。先週に引き続き放送された「総集編(2)動乱」は、帰蝶(川口春奈)が織田家に嫁ぎ、美濃と尾張が和議を結ぶところからスタート。織田家・斎藤家のそれぞれが抱える親子の不破故の問題が次々と描かれた。さらに、足利義輝(向井理)が光秀(長谷川博己)に“麒麟”の話をするシーンでは、光秀の中に募っていく“麒麟”への想いが示唆される。前回、駒(門脇麦)から発された麒麟のエピソードに続き、本作のタイトルを予感させる描写を挿入することで、ダイジェストでありながらより深く『麒麟がくる』が描く世界観を印象付ける構成になっていた。
サブタイトル「動乱」の名の通り、あちこちで激動の争いが巻き起こる。その中でも特に光る芝居を見せたのは、なんと言っても帰蝶を演じた川口春奈だろう。美濃のマムシ・斎藤道三(本木雅弘)の娘である帰蝶は、嫁ぎ先の織田信長(染谷将太)の元で“策士”としての本領を発揮する。この只者ではない嫁は、父である道三と夫である信長が対面することになったときに、自ら伊呂波太夫(尾野真千子)の元を尋ね、何袋もの砂金を使って信長のために300の兵を用意した。父の好みを知り尽くした帰蝶は、自分の“夫”が道三に“二度と”打ち取られないように最善の策を用意し、道三の元に送り出したのだ。そして道三は案の定、信長をすっかり気に入った様子。帰蝶の策略は成功を収める。
この砂金を用いたシーンは、あまりの迫力に放送当時のSNSでも大いに話題となった。さらに今回は、編集により粋な演出がなされており、帰蝶が砂金袋を落とすシーンと光秀たちが田舎道の廃屋から信長の隊列を数えるシーンが交互に映し出される。袋がボトリと鈍い音で落ちるごとに「百」「二百」「三百」と光秀が鉄砲隊の人数を声に出し、その数にみるみる驚愕の色を滲ませる道三の姿も見ものである。幼さの残るおてんば娘のような帰蝶が、得意げに相手を圧倒するシーンは『麒麟がくる』の中でも忘れられない名場面だろう。
そして織田家の中では信長と父・信秀(高橋克典)の間の亀裂がいよいよ深まる。信長は信秀が家督を誰に継がせるのかにヤキモキし、父親への不信感を拭えずにいた。その背景には、母である土田御前(檀れい)が信長よりも弟の信勝(木村了)を可愛がっていたことも影響があった。両親からの愛に飢えていた信長の心は、結局最後まで満たされることはなかったのである。信秀の死後、織田家はまったく一枚岩ではなかった。その様な状況で信長は帰蝶の策略を借り、織田彦五郎(梅垣義明)を殺してしまうのであった。