『私たちはどうかしている』はまるで“現代版ロミジュリ”? ドラマに光る様々な“おいしさ”

『わたどう』は“現代版ロミジュリ”?

 現時点では明かされていないが、椿を演じる横浜流星の光を宿していない沈んだ目も気になるところ。誰のことも寄せつけない、信頼できるものなど何一つないと言わんばかりの「拒絶」と「諦め」の滲む目もと。あの事件で変わってしまったのは七桜一家だけでなく、椿の心にも影を落としているのかもしれない。

 また、忘れてはならない本作ならではの見どころに、日本の伝統美、四季折々の風物詩などをモチーフにした「和菓子」が挙げられる。七桜にとっては母親との唯一の繋がりであり、椿が自分の世界に色彩を与えてくれたきっかけ、かつ彼と自分をまた結びつけることとなった「自分の一部であり全部」だ。悲しみも痛みも含めて「生きる」ことそのものであり、彼女にとって幾重にも複合的な意味合いを持つのであろう和菓子作り。そんな自分の最大の武器を用いて、依頼者や会合の趣旨に合わせた独創的で逆説的なストーリーを込めたモチーフ提案をする七桜の感性、センスも見ものである。

 もちろん、椿にとっても七桜にとってもそれはまさに自身の「生きざま」とも言えるのであろう、心血注いで作られた作品の数々は息を飲むほど美しい。そこには直接は言葉にできない想いや祈りをモチーフに託す、古来日本人の“粋”なエッセンスが光る。また、なかなか一般人が立ち入ることのできない「お茶会」をはじめ、日本古来の社交界の様子を覗き見ることができるのも趣深い。知らず知らずのうちに和歌や季語、お茶のお作法などの教養に触れられるのもまた、本作の“おいしい”ところだろう。

■楳田 佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『私たちはどうかしている』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:浜辺美波、横浜流星、高杉真宙、岸井ゆきの、和田聰宏、岡部たかし、前原滉、草野大成、山崎育三郎、須藤理彩、中村ゆり、鈴木伸之、佐野史郎、観月ありさ
原作:安藤なつみ『私たちはどうかしている』(講談社『BE・LOVE』連載)
脚本:衛藤凛
演出:小室直子、猪股隆一
音楽:出羽良彰
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:鈴間広枝、松山雅則(トータルメディアコミュニケーション)
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:www.ntv.co.jp/watadou
公式Twitter:@watadou_ntv
公式Instagram:@watadou_ntv

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