役所広司主演『すばらしき世界』トロント国際映画祭正式出品へ 西川美和「“燃えるような”上映に」
役所広司が主演を務める西川美和監督最新作『すばらしき世界』が、9月10日から開催されるトロント国際映画祭にてワールドプレミア上映されることが発表され、日本公開日が2021年2月11日に決定した。
本作は、『復讐するは我にあり』(文春文庫)で直木賞を受賞した佐木隆三の小説『身分帳』(講談社文庫)を原案とした西川監督の最新作。これまで一貫してオリジナルにこだわり続けた西川監督が、初めて実在の人物をモデルとした原案小説をもとに、その舞台を約35年後の現代に置き換え、徹底した取材を通じて脚本・映画化に挑む。
「今度こそ、まっとうに生きる!」と13年の刑期を終えた三上(役所広司)を待っていたのは、目まぐるしく変化する、想像もつかない世界だった。三上に近づき、彼の姿を面白おかしく番組にしようする2人の若手テレビマン。まっすぐ過ぎるが故にトラブルばかりの元殺人犯が、いつしか彼らの人生を変えてしまう。
三上が自らテレビ局へ送った、刑務所内の個人台帳である『身分帳』を手にするテレビディレクターを仲野太賀、三上が更生していく様子をテレビ番組にしようと、獲物を狙うように近づくテレビプロデューサーを長澤まさみが演じる。そのほか、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、安田成美らが共演に名を連ねた。
カナダで毎年9月に開催されるトロント国際映画祭は、北米最大の国際映画祭であり、過去に『スポットライト 世紀のスクープ』『ラ・ラ・ランド』『グリーンブック』などが、最高賞にあたる観客賞を受賞。今年は、新型コロナウイルス感染拡大影響により世界中の映画祭が規模縮小を余儀なくされ、トロント国際映画祭も長編映画50本、短編映画プログラム5本と例年の4分の1程度に絞られているが、本作はその狭き門を突破した。
過去作における西川監督の海外での評価としては、『ゆれる』で第59回カンヌ国際映画祭監督週間に出品、当時韓国で公開された折には、アートシネマの中で突出した記録となる6スクリーン15日間で30万人動員というスマッシュヒットを記録。『ディア・ドクター』、『夢売るふたり』では「自らオリジナル脚本を手掛け、様々なジャンルの映画に挑戦している監督」として定評を得ており、『永い言い訳』は「喪失とそれを癒すための過程を丁寧に描いた作品」として高く賞賛され、アジア各国に加えフランス、ポルトガルでも公開された。トロント国際映画祭への出品は、本作で3作品連続の快挙となる。
本作は、英題『Under The Open Sky』としてワールドプレミア上映を予定。劇中で主人公・三上が生きる世界を印象付けるあるセリフから引用し、今回の英題を決定した。
トロント国際映画祭の開催期間は9月10日から19日で、受賞結果は、映画祭最終日にあたる9月19日(現地時間)に発表される。正式出品を受け、西川監督、主演の役所がコメントを寄せた。
コメント
西川美和(監督・脚本)
トロント国際映画祭には格別な思い出があります。『夢売るふたり』(2012)の上映中、ラスト20分のところで観客の目の前でフィルムが燃えたのです。映画は突然中断し、私は映写技師のところに駆け込み、スタッフは大慌てでしたが、応急処置で上映が再開されるまでの30分間、地元の映画ファンのほとんどが席を立たずに辛抱強く待っていてくれており、最後は同じ旅を終えた仲間のような拍手で迎えてもらいました。北米最大の映画祭であると同時に、市民や映画ファンと距離の近い、大好きな映画祭です。コロナの影響でたくさんの映画が人に観てもらう場を失う中で、『すばらしき世界』の招待を決断して頂いたことに、心から感謝しています。今作も、“燃えるような”上映になりますように!
役所広司(主演・三上正夫)
(第50回カンヌ国際映画祭でパルムドール・作品賞を受賞した)『うなぎ』で初めてカンヌ国際映画祭に参加しました。その時、海外の観客と一緒に観て「こんなにも、笑ってくれるんだ!」って驚きましたが、この『すばらしき世界』にも、『うなぎ』と共通するような、ユーモアや笑えるところがあります。まっすぐ過ぎて不器用な三上と本作を、是非楽しんで頂けたらと思っています。
■公開情報
『すばらしき世界』
2021年2月11日(木・祝)
出演:役所広司、仲野太賀、橋爪功、梶芽衣子、六角精児、北村有起哉、長澤まさみ、安田成美
原案:佐木隆三著『身分帳』(講談社文庫刊)
脚本・監督:西川美和
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会