新ドラマが受けた新型コロナウイルスの打撃 物語の世界観に与える影響は?
コロナ禍を意識した配信・深夜ドラマ
地上波のドラマはまだまだこれからという感じだが、配信や深夜ドラマでは、コロナ禍を意識した作品がポツポツと出始めている。
Paraviで先行配信され、テレビ東京でも放送された深夜ドラマ『love distance』は、あるマンションを舞台にした群像劇。コロナ禍にリモートワークで働く夫婦、男二人女一人で共同生活する動画配信者、カメラマンが登場する、人と人のディスタンス(距離)をテーマとした作品だが、マスク越しにキスしようと女の子が誘う場面があるのが面白く、この方向性を進めると、新しいドラマが作れるのではないかと思った。
一方、朝日放送テレビ制作で、関東ではテレビ朝日系の土曜深夜に放送されているステイナイトミステリー『クレイジーレイン』は、コロナの影響で閉店したライブハウスで起きた殺人事件を捜査する刑事たちのドラマ。この設定を思いついたこと自体を、まずは評価したい。
最後に途中からコロナ禍の日常を取り込んだことで、面白いことになっているのが『警視庁・捜査一課長2020』(テレビ朝日系)。内藤剛志が主演を務める人気シリーズだが、放送中断中には、登場人物が序盤にリモートで会話をするテレワーク版ミニドラマを追加した傑作選を放送し、再開後は、劇中の刑事が外で捜査する場面でマスクを着用するシーンが入るようになった。
中でも注目は本田博太郎が演じる笹川健志警視庁刑事部長で、アベノマスクと呼ばれる小さなマスクをつけて登場するシーンがある。そのことに深い意味はないのだが、マスクをずらしたり伸ばしたりといった小芝居をしつこくおこなう笹川をみていると、コロナ禍の現状を、作り手がなんとか描こうとしているのがわかり好感が持てる。
コロナ禍の現実をどう取り込むかというのは難しい問題だが、作り手には諦めずに格闘してほしいと思う。やり方はいくらでもあるはずだ。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、黒川智花、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子、黒川智花
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜放送
出演:多部未華子、瀬戸康史、眞栄田郷敦、高橋メアリージュン、宮尾俊太郎、平山祐介、水澤紳吾、岡部大(ハナコ)、若月佑美、飯尾和樹(ずん)、夏子、富田靖子、草刈民代、趣里、大森南朋
原作:『家政夫のナギサさん』(四ツ原フリコ著/ソルマーレ編集部)
脚本:徳尾浩司
演出:坪井敏雄、山本剛義
プロデューサー:岩崎愛奈(TBSスパークル)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS