坂元裕二がコロナ禍に見せた“作家の矜持” 『リモートドラマ Living』には『最高の離婚』要素も

坂元裕二がコロナ禍に見せた“作家の矜持”

 『リモートドラマ Living』(NHK総合)は、打ち合わせから撮影まで全てリモートで作られた1話15分の短編ドラマだ。5月30日に放送された第1話が広瀬アリス&すず、第2話が永山瑛太&絢斗という実際の姉妹、兄弟が主演を務める作品だったが、6月6日の第2週に放送された第3話は中尾明慶&仲里依紗、最終話となる第4話は青木崇高&優香(声のみ)という実際の夫婦が共演。

 新型コロナウイルス感染に対する配慮から生まれたリモートドラマだったが、結果的に脚本を担当する坂元裕二がコロナ禍の現実に対してファンタジーという虚構で対峙する姿を作家の矜持として見せる作品となっていたと言えるだろう。

 第3話「おでんとビール」の、シゲ(中尾明慶)とアキ(仲里依紗)という二人の夫婦の小さなすれ違いが大きくなり、最後に妻が離婚を切りだすという展開は、『最高の離婚』(フジテレビ系)などの作品で書いてきた坂元裕二が、もっとも得意とする物語である。

「夫がね、妻に言う『ごめん』って、もうその話やめろって意味なのよ」

「『ごめんね』って言葉でごまかされる度にさ、シゲくんが遠くに見えて、どんどん私、一人になってくんだよね」

といった台詞は、聞く度に胃が痛くなるもので、4話の中では一番生々しいエピソードである。

 と同時に面白いのは、時間SF的なファンタジーとして描いていること。シゲの妻には催眠術がかかっており、ある言葉を言うと記憶がリセットされる。だからシゲはアキが「別れよう」と言う度にその言葉を口にして、ゼロからやり直そうとする。

 恋愛シミュレーションゲームやその影響下にあるドラマやアニメでよく見られる時間巻き戻し&ルート分岐系の物語だが、同時に壊れた夫婦の関係をやり直そうとする物語をコロナ禍のぶつけることで「一度壊れたものはやり直すことができるのか?」とこちらに問いかけているようにも見えた。

 先週の姉妹・兄弟の会話がイチャイチャ感に溢れていたのに対し、夫婦だとギスギス感(外から見ているとそれが面白いのだが)が強く、実際の夫婦が演じているだけに、こんなやりとりを演じて二人は大丈夫だろうか? と心配になるくらいだ。もちろん、それくらい迫真の二人芝居だったということではあるのだが……。

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