BLM運動でハリウッドにも変革のとき ジョン・ボイエガ、マイケル・B・ジョーダンらのアクション
映画・TV産業への批判も増えた。黒人として初めて米国の主要ネットワークでプレジデントを務めたチャニング・ダーシーは、TV制作の監督人事会議で「女性1人、有色人種1人を入れさえすればあとの8人は白人男性で良い」といったスタンスが横行していると明かしている。俳優アンソニー・マッキーは、自身が出演するマーベル・シネマティック・ユニバースの制作現場がプロデューサーからアシスタントに至るまで全員白人であったにも関わらず、『ブラックパンサー』のときだけ一斉に黒人を雇う同スタジオの対応ほど人種差別的なことはない、と語った。2009年から2015年にかけて人気を博したアメリカの人気ドラマ『glee/グリー』に出演したアンバー・ライリーの場合、主演リア・ミシェルの人種差別的なイジメ疑惑騒動を受けて(「リアをレイシストとは呼ぶ気はない」としながら)基本的に黒人役者は三番手以下の扱いであること、それゆえ、彼らに横暴な態度をとっても立場が脅かされないと認識する白人の主演女優が酷い行動に出がちであることを明かしている。キャリア初期、彼女にこんな言葉を放ったプロデューサーもいたという。「有色人種の役者は使い捨てのようなもの。だって、世界自体がそうなっているんだから」。
『フルートベール駅で』から『黒い司法 0%からの奇跡』まで、人種差別問題を描く映画に主演してきたマイケル・B・ジョーダンは、LAで行われたBLMプロテストのなか、ブラックカルチャーで利益をあげるスタジオやエージェンシー会社に向かって黒人雇用状況の改善、黒人幹部の起用を呼びかけた。ハリウッドのエグゼクティブに黒人が少ないことは大きな問題として掲げられている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の2020年調査では、11のメジャーおよびミッドメジャー・スタジオのうち93%の上級経営幹部が白人とされた。「ダイバーシティ」なポップカルチャーが人気でも、その舵取りをしているのは白人男性ばかりで、結局のところ有色人種のキャリアアップの機会や「非白人」的な表現を行える場は制限されている、といった告発は数多い。「黒人にとって、映画スタジオのトップになるよりは、大統領になるほうが簡単だろう」。かつてそう語ったのは、Netflixより『ザ・ファイブ・ブラッズ』をリリースしたばかりの監督スパイク・リーである。じつは、前述「Black Lives Matter: 黒人とアメリカ」コレクションを発表したNetflixの場合、他社から羨まれるほどに豊かなブラックネス・コンテンツを取り揃えている。The New York Timesによると、2015年時点でコンテンツ購入に携わる5人の黒人役員がいた影響が大きかったようだ。
アクティビストたちの積み重ねを経て、アメリカのエンターテインメント産業は変革のときを迎えたように見える。では、本当にこの潮流はつづくのだろうか? 少なくとも、プロテクターたちはそうしようとしている。6月終わりには、俳優ケンドリック・サンプソンとテッサ・トンプソン、BLM共同創設者らのもと、『ブラックパンサー』チャドウィック・ボーズマンら300人以上もの黒人映画人が名を連ねてハリウッドに改革を呼びかける書簡が発表された。 また、ヴィオラ・デイヴィスらは、米国舞台界に対しても書簡を送った。その中では、これまでの産業状況に終止符を打たんとする宣言が刻まれている。
「あなたがたの全員が、白人の脆弱性と白人至上主義の上に建てられた砂の城の一部だ」
「その城が今後も立ちつづけることはないだろう」
参考
・https://www.elle.com/jp/culture/celebphotos/a32773990/john-boyega-george-floyd-protest-london-emotional-speech-jp-200605/
・https://www.washingtonpost.com/arts-entertainment/2020/06/11/celebrities-black-lives-matter-movement/
・https://tv.parrotanalytics.com/US/when-they-see-us-netflix
・https://edition.cnn.com/2020/06/25/entertainment/pop-culture-reckoning-race-trnd/index.html
・https://abcnews.go.com/amp/Politics/74-americans-view-george-floyds-death-underlying-racial/story?id=71074422
・https://abcnews.go.com/Entertainment/wireStory/hollywood-black-lives-matter-diversity-needed-71324118
・https://variety.com/2020/film/news/black-representation-hollywood-inclusion-diversity-entertainment-1234693219/
・https://variety.com/2020/film/news/black-representation-hollywood-inclusion-diversity-entertainment-1234693219/
・https://variety.com/2020/biz/columns/hollywood-fight-racism-1234637212/
・https://www.hollywoodreporter.com/news/spike-lee-getting-a-black-840371
・https://www.nytimes.com/2020/07/05/business/media/netflix-hollywood-black-culture.html
・https://www.theguardian.com/film/2020/jun/23/idris-elba-viola-davis-hollywood-divest-police-letter
■辰巳JUNK
平成生まれ。おもにアメリカ周辺の音楽、映画、ドラマ、セレブレティを扱うポップカルチャー・ウォッチャー。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』(スモール出版)
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