作品の削除を行う事例も Black Lives Matterがアメリカの表現活動にもたらした変化

作品の削除を行う事例も Black Lives Matterがアメリカの表現活動にもたらした変化

 5月25日にミネソタ州ミネアポリス近郊でアフリカ系アメリカ人男性ジョージ・フロイドさんが警察官に拘束されたのちに死亡した事件から約1ヶ月。この悲劇から派生した「Black Lives Matter(BLM、黒人に対する構造的な暴力や人種差別を撤廃するための国際的社会運動)」はアメリカのエンターテインメントやジャーナリズムにも数々の影響を与えている。

HBO Maxより

 最も大きなニュースとなったのは、『風と共に去りぬ』(1939年)の配信中止だ。5月末にアメリカでサービスを開始したばかりのストリーミングサービスHBO Maxは、既存サービスのNetflixやDisney+との差別化を図るため、世界の名作をソフト化してきたクライテリオン・コレクションやグループ会社のターナー・クラシック・ムービーズと提携し名画の配信を行っている。その中でも『風と共に去りぬ』や『理由なき反抗』(1955年)といったクラシック作品は人気だった。だが、6月10日にLAタイムズに掲載された『それでも夜は明ける』(2012年)の脚本家ジョン・リドリー氏による投稿記事を受けて、配信を一時中止。リドリー氏は論考で、「奴隷制度の残忍さを無視し、有色人種へのステレオタイプを永続させている」とし、HBO Maxのラインナップから『風と共に去りぬ』を削除するよう求めた。

 配信中止より約2週間後の6月24日、ターナー・クラシック・ムービーズのホストで、シカゴ大学映画学科・メディア学科で教鞭を執る映画学者のジャクリーン・スチュワート氏が1939年の時代背景と『風と共に去りぬ』がはらむ問題点を解説する動画とともに再配信された。HBO Maxの広報担当者は、「映画をオリジナルのまま配信しなければ、これらの偏見がなかったと見なすのと同じ。より公正で公平、包括的な未来を創造するためには、歴史を認め理解しなければならない」との見解から、このような措置が行われたそうだ。動画内では、公開当初より何度も上映中止を求める運動が起きていたこと、舞台となったジョージア州で施行されていたジム・クロウ法(黒人の血が入ったものを含む有色人種の一般公共施設の利用を制限する南部諸州法、1876年から1964年まで施行)により、黒人キャストは映画のプレミアに出席できなかったこと、同作品で黒人女優として初のアカデミー賞助演女優賞を授賞したハティ・マクダニエルはアカデミー賞授賞式において他のキャストと同席を許されなかったことなどを述べ、「懐古主義というフィルターを通して当時の状況を描く今作は、奴隷制度の恐怖と人種的不平等という歴史を否定している」と結んでいる。

 『風と共に去りぬ』と同様の動きは、『ティファニーで朝食を』(1961年)、『アラジン』(1992年)、『ジャングル・ブック』(1967年)、『ラストサムライ』(2003年)などの作品に対しても行われている。コムキャスト傘下の英国ケーブルテレビ事業者Skyは、これらの作品の配信に際し、「この映画には時代遅れの言動や文化的描写があり、現代において不快感を与える可能性があります」という免責事項を追加することを決めた。また、同社のサービス内の全ての作品を見直し、必要に応じてこういった文言を表示するようにするという。広報によると、「視聴者が十分な情報に基づいた判断を下し視聴する映画や番組を決定できるよう、情報の追加を含め対応していく」ためだそうだ。

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