「配給会社別見放題配信パック」必見作品は? 他配信サービスでは観られない作品も
4月に発足した「ミニシアターを救え!」プロジェクトなど、コロナ禍の感染拡大の影響で休館を余儀なくされ、経営の危機に陥った映画館を救うための試みが現在さまざまな形で行われている。そうした中で大きな打撃を受けているのは映画館だけではない。新作映画が公開できないことで、中小規模のいわゆる独立系映画会社も、極めて困難な状況になっているのだ。無論、映画配給会社がなくなってしまえばいくら映画館が存続したところで上映する映画は底をついてしまう。そこで立ち上げられたのは「Help! The 映画配給会社プロジェクト」だ。
そのひとつとして5月にスタートしたのが「配給会社別見放題配信パック」。株式会社アップリンクが運営するオンデマンドサービス「UPLINK Cloud」を介して、日本国内のミニシアターなどで上映されている中小規模作品を配給する各配給会社の作品の中から選りすぐりのタイトルがパックとなってまとめて配信販売されるというものだ。いずれも3カ月間の視聴期限付きで、値段も作品数も配給会社ごとにまちまち。また配信期間の延長特典付きで、寄付もできるパックも6月中まで販売されている。
第1弾では5社の96作品(参考:独立系配給会社別の見放題配信パックスタートへ ジャン=リュック・ゴダールやホン・サンス作品も)が、そして5月下旬にスタートした第2弾では8社の137作品が配信(参考:独立系配給会社別の見放題パック第2弾配信 『立ち去った女』『昔々、アナトリアで』など全137作)されており、そのラインナップはヨーロッパ系の名作とよばれる部類の作品から近年の作品、さらにはアジア映画やドキュメンタリーなど実にバラエティに富んでいる。すべてを網羅しようと思うと233作品で27,300円もかかるわけだが、これだけ良質な作品を日本に紹介してくれる配給会社を救えると考えれば、それだけの価値があるといえよう。とは言っても、残り2ヶ月ですべてを鑑賞しきるのもなかなか大変なことだ。ここでは各配給会社のパックごとに、必見の作品を紹介していこうと思う。
まずは「クレストインターナショナル」の12作品から。ほとんどがAmazon Prime Videoでレンタル視聴が可能な作品ではあるが、12作品で2,480円かつ視聴期間の長さを踏まえればこちらのほうがメリットは大きい。ポルトガルの巨匠マノエル・ド・オリヴェイラ晩年の傑作『アンジェリカの微笑み』は、とても100歳を超えた長老が撮ったとは思えないほど瑞々しい傑作であり、アラン・レネの遺作となった『愛して飲んで歌って』も実に愛すべきフランス映画らしい一本。ホン・サンスの近年の4作品も一気に観られ、ジャン・ルノワールの不朽の名作『ピクニック』もあるとなれば、まずこのパックから試してみるというのもいいだろう。
「ザジフィルムズ」の30作品はいかにもシネフィル受けするラインナップで、もはやこのラインナップを眺めているだけでも満足感が高く、それがいつでも観られる状態にあるということを考えれば、2,980円はあまりにも安い。ジャン=リュック・ゴダールの『女と男のいる舗道』は、数年前にかなり魅力的な画質のBlu-rayがリリースされたが、意外と観る機会の少ない一本。また先日リバイバルされていたアラン=ロブ・グリエの作品群や、イングマール・ベルイマン、アニエス・ヴァルダ、さらにはヤン・シュヴァンクマイエルの『アリス』まで入っており、映画の勉強をしている若い人には最高の教科書となるに違いない。