『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が象徴していたハリウッド大作人気 当時の熱狂を振り返る

『BTTF』の熱狂を振り返る

 さて、PART2ですが、この作品は前半は30年後の2015年の未来、そして後半が再び30年前の1955年に戻っての騒動が描かれます。1作目で主人公は両親の縁結びのため奔走しましたが、PART2では今度は将来生まれる自分の子のトラブルのため未来に行き、一旦事件解決と思いきや、またそこでのハプニングが過去に影響を及ぼし大ピンチに。それを正すため過去にまた戻るのです。PART3は1885年の西部開拓時代が舞台。だからこのシリーズでいわゆるSF映画らしい、フューチャー=未来社会が登場するのは『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』だけなのです。ここに登場する未来のガジェットが大きな話題を呼びました。中でも人気だったのは、空飛ぶ(宙に浮かぶ)スケボーのホバーボードと履くと靴ひもが自動的に締まる機能のついたNIKEのシューズです。NIKEのシューズは2011年にレプリカシューズが限定販売、さらに2015年(つまり映画で描かれた未来と同じ年に)、本当に“自動靴紐結び”機能がついたモデルがチャリティオークションで出品されました。

 実際の2015年時は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』公開30周年かつPART2で描かれた年だったので、劇中の未来が現実をどこまで予想していたか、その答え合わせみたいな記事が多かったように記憶しています。映画では、2015年には空飛ぶ車が行き交っていますが、これは実現できていません。ウェアラブルコンピュータみたいなものも登場しますが、スマホまでは予想できていなかったみたいですね。1作目の1955年時代のドタバタを残しつつ、この未来パートがあることで、PART2は、よりテンコ盛りのエンターテインメントになっています。

 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズは、『ドラえもん』的なSF小噺にアメリカの高校生青春コメディを掛け合わせたようなエンターテインメント。また“過去をいじれば現在や未来の問題を解決できる”というタイムトラベルもののセオリーをメジャーにした作品かもしれません。タイム・トラベルが大きなカギとなる『アベンジャーズ/エンドゲーム』でも、アイアンマンことトニー・スタークがこの映画のタイトルをわざわざ引き合いに出して議論するシーンがあるぐらいです。

 アイアンマンつながりでいえば、『アベンジャーズ』のテーマ曲を作曲したアラン・シルヴェストリが本作の音楽を担当(彼はデロリアンが活躍する『レディ・プレイヤー1』の曲も担当しています)。また、『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の最後に、PART3の予告がついていました。こういうつながり方も昨今のマーベル映画のスタイルを先取りしていましたね。3作を通じて描かれるのは「自分の未来は自分で切り開け」という青春映画らしい鉄板のテーマ。SF映画の名作、コメディ映画の傑作、青春映画の快作、それが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズなのです。

■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter

■放送情報
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』
日本テレビ系にて、6月19日(金)21:00〜22:54放送
監督:ロバート・ゼメキス
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
出演:マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、リー・トンプソン、トーマス・F・ウィルソン、エリザベス・シュー
(c)1989 Universal City Studios and U Drive Productions, Inc. All Rights Reserved.

『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』
日本テレビ系にて、6月26日(金)21:00〜22:54放送
監督・原案:ロバート・ゼメキス
製作総指揮:スティーヴン・スピルバーグ
出演:マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、メアリー・スティーンバージェン、 リー・トンプソン、トーマス・F・ウィルソン
(c)1990 Universal City Studios, Inc. All Rights Reserved.

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