『なつぞら』以降は名バイプレーヤーの道もあった? “女優”渡辺麻友の功績を辿る

 デビュー10周年の節目に「新たな挑戦、イチから出直すつもりで、外の世界に飛び出そうという決意をさせていただきました」と第9回総選挙で卒業を発表し、卒業後は本格的に女優業として活動。2018年に卒業後初出演となる『いつかこの雨がやむ日まで』(東海テレビ・フジテレビ系)で、ミュージカル女優に憧れる役で主演を務める。幼い頃殺人を犯した兄や、精神を病んだ母親の存在、自分の死を持って、狂気の演技を覚醒させようとするなど、かつての大映ドラマのような昭和の香りがするドロドロとした作品は、古き良きアイドルのイメージがある渡辺にはフィットしていたように思う。歌唱シーンや、ミュージカル『ロミオとジュリエット』を演じるシーンもあり、実際にミュージカル公演後に出演したこのドラマは、渡辺の当時の現状とも重なり、アイドル時代のパブリックイメージを壊そうとした作品とも言える。

 そして2019年にNHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』に出演し、なつの同僚・三村(下山)茜役を演じる。これまで、主演やヒロインを演じることが多く、そうしたポジションならではの切迫感が伝わってきたが、この作品では自然な演技でキッチリとドラマを支えていた。特に、結婚・出産を経て退職し、渡辺が持つしっかり者の雰囲気がお母さん役に似合い、外からなつを支える姿に、バイプレーヤーとして光る女優だと立証された。2018年に『渡辺麻友~AKB48卒業までの63日間に密着、そしてその未来~』(フジテレビ NEXT)で、「私も息の長い女優というか、何年も必要とされるような女優さんになれたらいいな」と女優像を語っていたが、本人もそうしたバイプレーヤーとしての路線を見出したとも言える。もしかしたらそれは『マジすか学園』のネズミ役ですでに立証されていたのかもしれない。

 『なつぞら』での演技で幅広い層に受け入れられ、元・AKBではなく演技派女優として本当のスタートを切るはずであっただけに、今回の引退は惜しい。『なつぞら』を観ていても、30代40代と、母親役や奥方が似合う年齢になってからが面白い女優になりそうだし、息の長い女優になっていったのは間違いないだろう。

■リリース情報
ドラマ『さばドル』
DVDレギュラーBOX発売中
出演:渡辺麻友、安藤玉恵、坂田聡、神永圭佑、若葉竜也、中村織央、斎藤嘉樹、土平ドンペイ、村上航、渡り廊下走り隊7メンバー、市川美織(AKB48)、乃木坂46メンバー、高橋ひとみほか
企画・制作:秋元康
脚本:根本ノンジ、安倍照雄
監督:佐藤太、豊島圭介、 廣田啓、 佐野友秀
音楽:MOKU
プロデューサー:合田知弘(テレビ東京)、阿比留一彦(電通)、椋樹弘尚、田中誠一
制作:テレビ東京、電通
製作・著作:「さばドル」製作委員会
発売元:「さばドル」製作委員会
販売元:アニプレックス

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