野間口徹、朝ドラ『エール』で見せる受けの芝居 視聴者の休息処となる“恵劇場”

野間口徹、『エール』で見せる受けの芝居

 朝ドラ『エール』(NHK総合)の第44回で初めて登場した喫茶バンブーの梶取夫妻。二人は、裕一(窪田正孝)と音(二階堂ふみ)に喫茶店の裏にある一軒家を紹介し、その後も、彼らの良き相談相手となってきた。情緒たっぷりに自身の過去を語る恵(仲里依紗)と「え、そうなの?」と戸惑う保(野間口徹)とのやりとりは、視聴者の間で「恵劇場」と呼ばれている。「恵劇場」での仲のコメディエンヌっぷりに注目が集まるが、その背景には名脇役として名高い野間口が見せる受けの演技がある。

 第12週では、裕一を取り巻く登場人物たちにスポットを当てたオムニバス形式の物語が放送されており、第58回が描くのは、喫茶バンブーの店主、梶取保と恵のなれそめだ。

 野間口はシリアスな役からコントまで演じる名バイプレイヤー。コントユニット「親族代表」や『サラリーマンNEO』(NHK総合)などではコミカルな演技を、『SP 警視庁警備部警護課第四係』(フジテレビ系)では怪しい雰囲気を醸し出すつかみどころのない役どころを演じ、2019年に放送されたサスペンスドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)ではストーカー気質の主人公の元夫役で話題を呼んだ。野間口の確かな演技力は、視聴者に強烈な印象を残す。

 そんな野間口だが、以前インタビューで「主役を輝かせる立ち位置がとにかく楽しい」(引用:野間口徹、脇役こそが生きがい!主役輝けば「映らなくてもいい」| シネマトゥデイ)と語っていた。「脇役としての立ち位置に生きがいを感じる」と話す彼の一貫した姿勢が、主役の言動や感情を際立たせ、物語全体を盛り上げる。

 『エール』において、仲のイキイキとした演技が魅力的に映るのも、野間口が恵の昔話に戸惑う保をごく自然に演じているからこそ。第56回、57回であの世から帰ってきた音の父・安隆(光石研)も、第2週で「人にはみんな役割がある。誰もが主役をやれるわけじゃない。だけど主役だけでもお芝居はできん。必ず、それを支える人がいるんだ」と言っていたが、野間口の立ち位置はまさにそれだ。野間口は仲の演技の受け手に徹し、場合によっては異質な存在になりかねない「恵劇場」をちょうどいいバランスに保ち、安心して笑えるシーンを提供する。また保が裕一らを喫茶店の店主として穏やかに“見守る”役割も担うことで、喫茶バンブーが、シリアスな回もある本作の休息場所として成り立っている。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる