『ジャングル・ブック』が定義付けた映画の新ジャンル ジョン・ファヴローの“娯楽職人”気質も全開

『ジャングル・ブック』の革新的映像表現

 劇中では同じ“ジャングル映画”である『地獄の黙示録』や、少年の成長譚を描いた過去の名作へのオマージュを散りばめるといったアクセントこそあれど、概ねのストーリーはオリジナルのアニメ版を徹底的に踏襲。そして従来の実写版ではいずれも大きな壁となっていた動物の描写を、単に技術の進歩に従属させることなく“動物らしく”映し、また唯一の人間キャラクターであるモーグリの活き活きとした動きを際立たせる。そして公開時にファヴローが「キップリングの時代、自然は克服するものだったが、現代では守るべきものに変わった」と語っていたように、オリジナルのアニメ版や原作への敬意を込めながらも時代に即した物語へとニュアンスが書き換えられている点も見逃せない。これは『ライオン・キング』でも同様のアプローチが取られていたはずだ。

 2018年頃には、本作の続編の企画がファヴローと脚本のジャスティン・マークスの続投のもとで進行しているという報道もあったのだが、それから2年以上続報がなく、現在ではどうなっているのか不明瞭である。オリジナルのアニメ版も2003年にディズニー・トゥーン・スタジオの作品として続編が製作されているわけだが、こちらはお世辞にも出来の良い作品とは言い難いものだった。とはいえ『ライオン・キング』でディズニー実写の技術革新は一段も二段もスケールアップしているだけに、“超実写版”をも凌駕する作品になることは間違いないだろう。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
土曜プレミアム『ジャングル・ブック』
フジテレビ系にて、6月6日(土)21:00~23:10放送(地上波初放送・本編ノーカット)(※一部地域を除く)
監督:ジョン・ファヴロー
出演:ニール・セディ、ベン・キングズレー、ビル・マーレイ、ルビタ・ニョンゴ、クリストファー・ウォーケン、スカーレット・ヨハンソン
脚本:ジャスティン・マークス
(c)Disney Enterprises, Inc.

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる