大東駿介が『浦安鉄筋家族』で演じる春巻龍が完璧! 相反する世界観をスキなく見せる演技の土台
大東駿介の2019年からの活躍ぶりを振り返っても、改めてその多様な魅力を感じずにいられない。
2019年1月期には、NHKよるドラ『ゾンみつ』(1月期)でヒロイン・みずほの夫で、妻の親友と不倫を続けるクズ男を、愛嬌たっぷりに演じていた。アホで最低なのに、稚拙さや素直さ、小物ぶり、愚かさに、うっかり笑えて、うっかり可愛く思えてしまう。クズなのに完全には憎み切れない愛らしさの加減が絶妙なのだ。
また、NHK大河『いだてん』では大きくイメージを変え、平泳ぎの金メダリスト・鶴田義行をゴリゴリマッチョに演じていた。エリート水泳選手としての説得力ある体は、役作りのために10キロも増量し、もともとカナヅチだったのに水泳の猛特訓をしたことから仕上げられたものだった。その変身ぶりにも驚かされたが、さらに強く惹きつけられたのは、華々しく強い姿の一方、水泳選手としてのピークをこえてから見せた葛藤の表現である。
また、『伝説のお母さん』では、エリートで、他の仕事も家事も育児もこなす「デキる男」ながら、早々に魔王に取り込まれてしまう「勇者・マサムネ」をコミカルに演じていた。
有能さとテキトーさ、薄情さ、計算高さを持ち合わせる「勇者」像は、ある意味、最も人間くさく見えた。同作の制作統括を務めた篠原圭氏は、当サイトで行ったインタビュー(参考:『伝説のお母さん』なぜNHK「よるドラ」枠で放送? 企画の背景を制作統括に聞く)でこう語っている。
「(魔王退治という)壮大なスケール感と、相反するちっちゃさとの両面を一瞬のスキも見せずに演じてくれたのが、大東さんと、夫・モブ役の玉置玲央さんでした」
確かに「壮大なスケール感と、ちっちゃさ」のような、相反する世界観をスキなく見せることは、作品・役柄に限らず、彼の土台に共通してある気がする。
一見エリートで最強なのに、弱さがあり、クズなのに可愛さがあり、最弱なのに、たくましさがあり、アホなのに、聡明さもある。本来、そうした相反する要素を併せ持つのが、人間なのだろう。ときには台本に書かれていない、矛盾する面・相反する面も、血肉の通う表現で立体化しているからこそ、彼の演じる役はどれも奥行きがあって、魅力的なのだ。
ちなみに、大東は今年2月からnote上で、インタビューメディア「イエローブラックホール」を立ち上げ、様々な人にインタビューを行っている。それらの記事を読み、思考や視点に触れると、ますます彼の演技の魅力が明確に見えてくるかもしれない。
■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。
■放送情報
ドラマ24『浦安鉄筋家族』
テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0:12〜放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:12〜放送
地上波放送終了後、動画配信サービス『ひかりTV』『Paravi』で配信
出演:佐藤二朗、水野美紀、岸井ゆきの、本多力、斎藤汰鷹、キノスケ、坂田利夫、染谷将太、大東駿介、松井玲奈、宍戸美和公、滝藤賢一
ゲスト:広瀬アリス、MEGUMI、バッファロー吾郎A、ぺこぱ・シュウペイ
オープニング・テーマ:サンボマスター「忘れないで 忘れないで」(ビクターエンタテインメント / Getting Better)
エンディング・テーマ:BiSH「ぶち抜け」(avex trax)
原作:浜岡賢次『浦安鉄筋家族』(少年チャンピオン・コミックス)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:藤田絵里花(テレビ東京)、神山明子
監督:瑠東東一郎、吉原通克、諏訪雅、松下敏也
脚本:上田誠、諏訪雅、酒井善史(ヨーロッパ企画)
制作:テレビ東京、メディアプルポ
製作著作:「浦安鉄筋家族」製作委員会
(c)浜岡賢次(秋田書店)1993・(c)「浦安鉄筋家族」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/urayasu/
公式Twitter:@tx_urayasu