松井玲奈、女優として愛されるワケは? 『エール』から『浦安鉄筋家族』まで“緊張と緩和”の演技

松井玲奈が女優として愛されるワケ

 松井は、2015年にアイドルグループ・SKE48を卒業以降の5年間、シリアスからコメディまで、とにかくやり切る演技をしてきたことで、今ではドラマに登場すると、「何かしてくれるのではないか」「何かありそう」という期待を感じさせる。アイドル時代のキャラクターと同様の清楚で真面目な役を演じ、ドラマを彩ることも多いが、今回の3作のように、コメディエンヌやエキセントリックな役で、水を得た魚のように活き活きと演じる姿が特に印象深い。

 その演技の原点は、SKE卒業後連ドラ初出演となった、『勇者ヨシヒコ』(テレビ東京系)や映画『HK 変態仮面』などのエキセントリックな作品を数多く手がける福田雄一演出のドラマ『ニーチェ先生』(日本テレビ系)でのストーカー常連客・塩山楓役と言えるだろう。般若のような顔芸や、目を見開き捲し立てるセリフ回し、店の外から懐中電灯を顔の下にあてじっと見つめるなど、ぶっ飛んだ演技をやりきる姿勢は、アイドルでトップに立ってきた人間が、女優としてやっていく覚悟と、新天地で解放された清々しさを感じさせた。

 もともと、2010年のドラマ『マジすか学園』(テレビ東京系)のゲキカラ役で、生徒を恐怖に陥れる演技が話題を呼んだが、恐怖と笑いは紙一重だ。福田雄一作品や『笑う招き猫』で監督した飯塚健作品を経験したことで、間の取り方が巧みなコメディエンヌとしての才能が開花。後の『海月姫』(フジテレビ系)でのアフロの鉄道オタクや、『ブラックスキャンダル』(読売テレビ・日本テレビ系)の主人公の理解者と見せかけて陥れる裏の顔を持つ女優役など、キャラクターの明暗と裏表ーー「緊張と緩和」をうまく使いこなせるところが彼女の一番の魅力だろう。

 透明感のあるビジュアルを持ち、演じるキャラクターの振り幅を最大限まで広げる姿勢がある松井が、役者として重宝されるのは必然。今回3作品ともコメディエンヌとしての役柄だが、『行列の女神』ではギャップのある攻めの面白さ、『浦安鉄筋家族』では相手との駆け引き、『エール』では安心感のある明るさと、それぞれ違った笑顔を引き出すところに、演技の幅の広さを感じる。三者三様のキャラを演じ分け、改めて女優・松井玲奈の名バイプレイヤーぶりを感じている。

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

ドラマBiz『行列の女神~らーめん才遊記~』
テレビ東京系にて、毎週月曜22:00〜
※BSテレ東にて、毎週金曜21:00〜
出演:鈴木京香、黒島結菜、高橋メアリージュン、小関裕太、前野朋哉、夙川アトム、松井玲奈、利重剛、石塚英彦、高畑淳子、杉本哲太
原作『らーめん才遊記』(小学館ビッグコミックスペリオール刊)作:久部緑郎/画:河合単/協力:石神秀幸
脚本:古家和尚
監督:星護、池澤辰也、吉川厚志
音楽:佐橋俊彦
主題歌:THE イナズマ戦隊「WABISABIの唄」(日本クラウン)
オープニングテーマ:LOVE PSYCHEDELICO「Swingin’」(Speedstar Records / Victor Entertainment)
チーフプロデューサー:浅野太(テレビ東京) 
プロデューサー:中川順平(テレビ東京)、倉地雄大(テレビ東京)、黒沢淳(テレパック)、雫石瑞穂(テレパック)
制作協力:テレパック
製作著作:テレビ東京
(c)テレビ東京
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/gyouretu/

ドラマ24『浦安鉄筋家族』
テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0:12〜放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:12〜放送
地上波放送終了後、動画配信サービス『ひかりTV』『Paravi』で配信
出演:佐藤二朗、水野美紀、岸井ゆきの、本多力、斎藤汰鷹、キノスケ、坂田利夫、染谷将太、大東駿介、松井玲奈、宍戸美和公、滝藤賢一
ゲスト:広瀬アリス、MEGUMI、バッファロー吾郎A、ぺこぱ・シュウペイ
オープニング・テーマ:サンボマスター「忘れないで 忘れないで」(ビクターエンタテインメント / Getting Better)
エンディング・テーマ:BiSH「ぶち抜け」(avex trax)
原作:浜岡賢次『浦安鉄筋家族』(少年チャンピオン・コミックス)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:藤田絵里花(テレビ東京)、神山明子
監督:瑠東東一郎、吉原通克、諏訪雅、松下敏也
脚本:上田誠、諏訪雅、酒井善史(ヨーロッパ企画)
制作:テレビ東京、メディアプルポ
製作著作:「浦安鉄筋家族」製作委員会
(c)浜岡賢次(秋田書店)1993・(c)「浦安鉄筋家族」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/urayasu/
公式Twitter:@tx_urayasu

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