『エール』窪田正孝の“失恋フラグ”は朝ドラあるある? 第1話に続く異例の演出も
商業学校を卒業した裕一(窪田正孝)は、汽車で1時間の川俣にある伯父・茂兵衛(風間杜夫)の経営する川俣銀行に住み込みで働くことになる。権藤家に養子を出す側の三郎(唐沢寿明)らは裕一がいなくなったことに寂しさを抱いていたが、一方の裕一は明るい生活を送っていた。
和久田アナから朝ドラ視聴者の桑子アナへと変わり、“朝ドラ送り”にも一層熱のこもる『おはよう日本』(NHK総合)出演の高瀬アナは、底抜けに明るい川俣銀行の面々を「朝ドラでは鉄板の展開」と話し、『スカーレット』で言う、喜美子(戸田恵梨香)が大阪の荒木荘に住み込みで働く場面に例えていた。
川俣銀行は、銀行支店長の落合(相島一之)、行員歴15年の鈴木(松尾諭)、2年目の新人・松坂(望月歩)、事務員の昌子(堀内敬子)と、とにかく個性豊か。未来の頭取である裕一が仕事中、船を漕ぐほど暇な川俣銀行には女に触れ合いがないと、鈴木は“社会勉強”として裕一を川俣ダンスホールに連れていく。
そこで出会うのが、ダンスホール一番人気の踊り子・志津(堀田真由)だ。その場にいる男全員を振っていく志津であったが、裕一の持つチケットを自らもぎ取り、「シャルウィーダンス?」と彼を誘う。祝福の鐘の音と裕一の「ウィ……」という頼りない返事を合図に、2人のペアダンスはスタート。
ダンスフロアに流れる重低音のジャズをバックに、裕一はおぼつかない足取りでステップを踏んでいく。天にも昇る気持ちを覚えた裕一は、すっかり志津の虜に。死んだフナの目から、活力がみなぎる恋する男子へと復活を遂げるのだ。教会で一目惚れする音(清水香帆)の件といい、裕一は少々惚れっぽい一面があるのだろう。ちなみに、主人公が一度失恋を経験するという展開も鉄板の流れ。志津は『スカーレット』で例えると、荒木荘を出ていく圭介(溝端淳平)といったところである。
職場で色めき立つ裕一の様子を見て、落合らが企てるのが「恋で彼を元気づけよう作戦」。裕一は鈴木から「こちら側から働きかけなければ恋愛は発展しない」「恋愛は待ったら負けだ」と説得され、2日目の川俣ダンスホールへ。裕一の誘いを志津は再び受け入れた上、そこから回数を重ね志津から「外でご飯食べない?」と持ちかけてくる、思いがけない展開に。裕一の返事はもちろん「ウィ」である。
職場は、裕一の「恋で彼を元気づけよう作戦」の話題で持ちきり。ここで川俣銀行の紅一点・昌子の出番となる。唯一、女子の気持ちが分かる昌子は、女とは移り気であり、ライバルはごまんといるという現実を裕一に説く。そして、話は昌子の持論「交際の境界線」へと移っていくが、ここでまさかのタイムアップ。画面には糸に吊るされた工作風の文字で「交際の境界線についてはまたあした!」という、朝ドラとしては斬新な終わり方で幕を閉じることとなる。まるで、紀元前1万年から始まった第1話の冒頭を彷彿とさせる演出だ。今後、『エール』は物語のムードに合わせ、演出の仕方も大胆に変化していくのかもしれない。
■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter
■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/