『魔進戦隊キラメイジャー』の“安定感”と“懐かしさ” いまを明るく照らす戦士たちの輝き

『魔進戦隊キラメイジャー』戦士たちの輝き

 老舗の定食屋に趣き、お馴染みの店内を見渡すも、出てきた料理は未知の新メニューだった。そんな意外なバランスを持つ『キラメイジャー』は、各々の個性や嗜好を尊重する「イマドキ」の物語を展開する。「実は、もっと、周りの目は気にせずに」「好きなことを信じるチカラ」。オープニングテーマの歌詞が象徴するように、メンバーそれぞれの「好き」なことや「信じたい」ことを分かち合い、そこから生まれる前向きで明るい「きらめき」を力に変える。前時代的な価値観が急速に見直される近年こその、トレンドを押さえた作りと言えるだろう。

 また、作品を彩るフレッシュなキャスト陣も必見だ。中でも、キラメイレッド・熱田充瑠役の小宮璃央は、その天真爛漫な笑顔が作品の温度と見事に合致している。何かに閃いた際に「ひらめキーング!」と大声を上げ、わき目もふらずスケッチブックに噛りつく。あまりにクセの強いキャラクターだが、その「濃さ」が「爽やか」にも感じられるから素晴らしい。

 他にも、嫌味のないチャラさが魅力的な木原瑠生、健康的な可愛さが目を引く新條由芽、定番のクール系ブルーをしっかりと演じる水石亜飛夢に、母性あふれる笑顔が素敵な工藤美桜と、そろいもそろって眩しい面々である。彼らの屈託のない笑顔には、自然と頬が緩む。

 だからこそ、『キラメイジャー』を観ていると、なんとも不思議な感覚に襲われるのだ。2010年代のスーパー戦隊シリーズを思わせる「懐かしさ」と、「イマドキ」の価値観が飛び交う2020年の物語。そして、王道の「型」を彩るフレッシュなキャスト陣。つい先日放送が開始されたばかりなのに、もう半年ほど観続けているような錯覚。知っているテンションなのに、観たことのないストーリー。相反する要素や、そこに生まれるギャップを見事にまとめあげる、間違いのないプロの技である。気づけば、その伝統芸に身をゆだねてしまう。

 「ひとりひとりが輝くために、支え合うから5人必要なんです」。第2話にて、「自分のやりたいこと」と「キラメイジャー」の両立に悩むメンバーに、充瑠はこう語りかけた。常に全員が集合して現地で力を合わせることだけが、正解ではないのだ。たとえ離れていても、別々のことをやっていても、各々が輝いていることがチームとして大切なのだ、と。

 誰しも、自らの役割と嗜好のバランスに悩むことがあるだろう。役のために自分を殺す時もあれば、嗜好にこそ救われる時もある。好きなことを信じることが、周囲と生きる助けにもなる。『キラメイジャー』は、そんな「イマドキ」の価値観を、実にピュアに教えてくれるのだ。

 何かと暗く陰鬱なニュースが続く昨今。そんな今だからこそ、懸命に輝く戦士たちの眩しさに、元気を貰ってはどうだろうか。楽しい時でも、ピンチでも。頑張る時でも、ヘコんでも。「好き」を信じて輝くことは、心を健康に導くのだから。

■結騎了
映画・特撮好きのブロガー。『別冊映画秘宝 特撮秘宝』『週刊はてなブログ』等に寄稿。
ブログ:『ジゴワットレポート』Twitter

■放送情報
『魔進戦隊キラメイジャー』
テレビ朝日系にて、毎週日曜日9:30〜(一部地域を除く)
出演:小宮璃央、木原瑠生、新條由芽、水石亜飛夢、工藤美桜、古坂大魔王、鈴村健一、岩田光央、赤羽根健治、大河元気、長久友紀、水瀬いのり、中村悠一、高戸靖広、杉田智和ほか
プロデューサー:井上千尋、島川博篤(テレビ朝日)/塚田英明、望月卓(東映)/矢田晃一、深田明宏(東映エージェンシー)
原作:八手三郎
脚本:荒川稔久
音楽:松本淳一
監督:山口恭平ほか
アクション監督:福沢博文
特撮監督:佛田洋(特撮研究所)
制作:テレビ朝日/東映/東映エージエンシー
(c)2020 テレビ朝日・東映AG・東映
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/kiramager/

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