『仮面ライダーゼロワン』から“令和”が始まる! 時代が抱える恐怖と戦ってきた仮面ライダーたち
「この作品を 故 石ノ森章太郎先生に捧ぐ」というテロップから幕を開けた、2000年の『仮面ライダークウガ』。仮面ライダーという異形の戦士の魂を受け継ぎつつ、平成の新しいヒーロー像を模索する。その挑戦は、2019年現在『仮面ライダージオウ』という形で生き続けている。いつからか定着した「平成ライダー」という称号を総括し、築いたバトンを新時代へ。それを受け取るのは、「令和ライダー」第1号、『仮面ライダーゼロワン』である。
舞台は、AIロボ・ヒューマギアが実用化された世界。本作は、人工知能(AI)との共存を描いていくという。主人公・飛電或人(ひでん・あると)は、人工知能のリーディング・カンパニー「飛電インテリジェンス」を創立した祖父の死去を受け、同社の二代目社長に指名される。会社経営には興味がない或人だったが、「滅亡迅雷.net」によるハッキングで暴走するヒューマギアを前に、社長のみが手にできる「ゼロワンドライバー」を受け取る。人間の「夢」と「情熱」を訴えるゼロワンは、新時代をいかに彩るのか!?
仮面ライダーゼロワン、その最大の特徴は、デザインそのものにある。二本のアンテナが特徴的な「バッタ」の意匠は、言うまでもなく、初代の昭和ライダー・仮面ライダー1号に用いられたモチーフだ。そして、ひたすらに目を引く黄色の蛍光色は、約20年の平成ライダーが模索してきた「奇抜なビジュアル」の系譜にあたる。
つまりゼロワンは、モチーフで昭和を、アプローチで平成を継承した、正統なる「仮面ライダー」と言えるのである。まさに、令和の第1号を名乗るに相応しいデザインだ。ただカッコいいだけでなく、「ぎょっとする」、二足歩行の異形。黄色と黒、全身で警告色を放つその立ち姿は、多くの人の印象に強く残ることだろう。
また、人工知能(AI)を採用したストーリーも大変興味深い。昨今、「AIに仕事を奪われるかもしれない」というセンセーショナルな見出しが世間を騒がせることが多いが、『ゼロワン』は、まさにその近未来を描いていく。
「飛電インテリジェンス」が運用する人工知能搭載人型ロボ・ヒューマギアは、様々な仕事の現場に派遣され、人間社会に溶け込んでいる。しかし、それがハッキングされ暴走した際に、そのリスクはどこが引き受けるのか。コンピュータの判断を、我々はどこまで信頼し、身を委ねるべきなのか。そんな現代社会こそが抱える問題を、仮面ライダーという一年間のロングスパンで扱うというのだから、期待が高まる。
加えて、本作のトピックとして挙げられるのが、シリーズ初の「番組開始時からの女性ライダー参戦」である。
平成ライダーでいえば、『仮面ライダー龍騎』のファム、『仮面ライダー鎧武』のマリカや『仮面ライダーエグゼイド』のポッピーなど、数々の女性ライダーが活躍してきた。しかし、そのいずれも、劇場版でのゲストの立ち位置であったり、番組の中盤から現れるのが恒例であった。
『ゼロワン』では、番組開始早々に、対人工知能特務機関「A.I.M.S.」の刃唯阿(やいば・ゆあ)が変身する仮面ライダーバルキリーが登場。変身ベルトは同機関に所属する仮面ライダーバルカンと共通ではあるが、これは間違いなく、歴史的快挙と言えるだろう。そして玩具の面でも、仮面ライダーバルキリーのソフビやアクションフィギュアが続々とラインナップされている。AIだけに留まらない、すこぶる現代的な価値観だ。