『映像研』はアニメーションで放送するに相応しい作品だった 夜明けの街に見た明るい未来
まず感じたのが、「芝浜UFO大戦」で浅草が描かんとしたラストだ。人は大団円では終われない、平和的解決など存在しないという考え方は極めてリアルであり、これを創作物で描こうとした浅草は、確実に第1話時点の「映像研ではなかった」彼女を超えている。創作に対する究極の決断を、外部のミスが発端ではあるものの、彼女はやり遂げたといってもいい。
「芝浜UFO大戦」が完成した後、実際に作品を観終わってからオーバーヒートしてしまったかのように燃え尽きる彼女もまた、創作に打ち込む人間なら誰しも経験したことがあるだろう。無論、その後に迎える夜明けと、彼女がそこで発したセリフの大いなる意味も。
改めて本作を最後まで見届けた感想として、ここまで創作をする人間に寄り添ってくれたアニメはなかったと思う。また、最終話が「創り出そうとする人間」の「再出発」を描き、そしてそのままこのシーンが『映像研には手を出すな!』という作品の今後を想像せざるをえない胸の高まりを呼び起こすのも、非常に巧みで唸らざるをえない。
本作はまさに「創作人のための、創作人による作品」なのだ。ありとあらゆる場所から個性際立つ創作物が湧きおこっては人々を楽しませんとする現代の日本において、アニメーションで放送するに相応しい作品だったに違いない。浅草が最後に発したセリフには、明るい未来が見える。映像研メンバーである彼女たちにおいても、そして日本の誇るべきクリエイティブな世界においても。
「創作」という、苦しく茨の道ながらも人生の喜びに満ちた世界を生きる少女らの冒険活劇。それを1つの作品として表現してくれた『映像研には手を出すな!』に、改めて大きな拍手を贈りたい。
■安藤エヌ
日本大学芸術学部文芸学科卒。文芸、音楽、映画など幅広いジャンルで執筆するライター。WEB編集を経て、現在は音楽情報メディアrockin’onなどへの寄稿を行っている。ライターのかたわら、自身での小説創作も手掛ける。
■放送情報
TVアニメ『映像研には手を出すな!』
NHK総合にて、毎週日曜深夜24:10〜
原作:大童澄瞳(小学館『月刊!スピリッツ』連載中)
監督:湯浅政明
声の出演:伊藤沙莉、田村睦心、松岡美里ほか
キャラクターデザイン:浅野直之
音楽:オオルタイチ
アニメーション制作:サイエンスSARU
(c)2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会
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