考察よりもツッコミ合戦!? 『テセウスの船』竹内涼真演じる“ポンコツ心さん”の不思議な魅力
先週放送の第9話では、佐野の“自宅から青酸カリみつかる”という未来の新聞記事に気づき、佐野家のいたるところを探しまくり、「よし、青酸カリはない」と心さん。「いや、そんなはずはない」と心さん以外の誰もがそう思った瞬間で、実際、裏庭から青酸カリが。しかも、子どもが埋めたのかと思うほどわかりやすい場所に。そして、文吾を連行しようとする警察官に向かって「これは罠だーっ!!」と叫ぶ心さん……もはや運動会で精一杯がんばる我が子を応援する母の思い。愛しさが溢れて止まらないのだ。
SNSは黒幕についての考察と同時に、猪突猛進の心&文吾親子に対するツッコミみ合戦というダブルの盛り上がりを見せ、ドラマに対する満足度は向上の一途。「こんなのありえない」とそっぽを向いてしまえばそれまでだが、視聴者の多くは、どこまでもピュアな心さんの味方のよう。人は完璧すぎるより、少し隙があるほうが惹かれるとはよく言うが、心さんはその言葉を体現したような人物。髪の毛をクシャクシャしながら、知恵を絞ろうと必死な彼を応援せずにはいられないのである。
その一方で、父を疑っていた自分を省み、「申し訳ない」と土下座をするシーンをはじめ、毎話のように見せる美しい涙の数々は、竹内涼真の真骨頂。『陸王』(2017年/TBS系)、『ブラックペアン』(2018年/TBS系)などでも泣きの芝居が絶賛されてきた竹内だが、これまで以上に感情の高ぶりがそのまま涙としてあふれ出ているようで、一層魅せられてしまう。
放送前の制作発表会見では「クランクイン前日は寝れなかった」というほど日曜劇場初主演のプレッシャーを感じていた竹内だけに、今作で“若手イケメン俳優”という枠から飛び出し、長く愛される役者への一歩を踏み出したのかと思うと、胸が熱くなる。『テセウスの船』は、いよいよ最終回。黒幕は一体誰なのか、ポンコツ心さんは無事に過去を変えられるのか。そして、大役を経てネクストステージへと放たれた竹内涼真のその先が、ますます楽しみだ。
■nakamura omame
ライター。制作会社、WEBサイト編集部、専業主婦を経てフリーライターに。小学生男児2人の母。ママ向け&エンタメサイトを中心に執筆中。Twitter
■放送情報
日曜劇場『テセウスの船』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:竹内涼真、榮倉奈々、安藤政信、貫地谷しほり、芦名星、竜星涼、せいや(霜降り明星)、今野浩喜、白鳥玉季、番家天嵩、上野樹里(特別出演)、ユースケ・サンタマリア、笹野高史、六平直政、麻生祐未、鈴木亮平
原作:東元俊哉『テセウスの船』(講談社モーニング刊)
脚本:高橋麻紀(「高」はハシゴダカが正式表記)
演出:石井康晴、松木彩、山室大輔
プロデューサー:渡辺良介、八木亜未
製作:大映テレビ、TBS
(c)TBS