日曜劇場、ミステリージャンルで変化? 『テセウスの船』原作との比較で謎を解く

日曜劇場、ミステリージャンルで変化? 『テセウスの船』原作との比較で謎を解く

 日曜劇場で放送されている『テセウスの船』(TBS系日曜21時~)は、1989年に21人を青酸カリで殺害した父親を持つ息子が、過去に戻って事件を阻止しようとするミステリードラマだ。

 妻の由紀(上野樹里)の出産を間近に控えた田村心(竹内涼真)は、殺人事件を起こした警察官・佐野文吾(鈴木亮平)の息子であることを隠してひっそりと暮らしていた。そんな矢先、由紀は出産と引き換えに妊娠中毒症で命を落とす。

 死の直前に由紀から「真実から逃げないで」「この子といっしょに未来に向かって」「生きて」と言われた心は、事件と向き合うため、かつて事件が起きた宮城県にある音臼村跡地へと向かう。しかし突然、謎の霧に包まれ、なんと1989年にタイムスリップしてしまう。事件を起こす前の父親・佐野文吾と再会した心は、正体を隠して佐野の家に居候することに。由紀が残した事件のスクラップを元に殺人事件を阻止しようとする心。しかし、心が干渉したことで歴史は予想外の方向に動き出してしまう。

 原作は『週刊モーニング』(講談社)で連載されていた東元俊哉の同名漫画。タイトルの“テセウスの船”とはパラドックスの一つ。

 クレタ島から帰還した英雄・テセウスの乗ってきた船を後世に残すために修復作業が行われた。その際に、朽ちた木材を新しい部品に置き換え、当初の部品がなくなったとしたら、その船は同じ船だと言えるのだろうか? そして、これが人間だったらどうだろう? という問いかけから物語は始まるのだが、これは心がタイムスリップをして歴史を変えようとする行為や、逆に父親の正体を隠してひっそりと暮せば、過去の苦しみから逃れられるのだろうか? という問いにつながっている。

 同時にこのパラドックスは、原作漫画とドラマ版の対比にも用いることができる。

 昨年ヒットした『あなたの番です』(日本テレビ系)で起きた考察ブームを取り入れることで、犯人探しが盛り上がっている本作だが、漫画を読んでいた読者が見ても面白いのは、2020年(令和2年)に作ることの意味が、考え抜かれていることだ。

 音臼村の事件を見て、昭和の終わり(1988年)に事件が起こり、平成の始まり(1989年)に犯人が逮捕された連続幼女殺人事件を思い出す人も多いのではないかと思う。当時報道されたビデオや漫画が積まれた犯人の部屋のイメージからオタクの犯罪として広く知られるようになったこの事件は、インターネットが普及しゲームやアニメといったオタクカルチャーが日本を席巻する「平成という時代」をもっとも象徴する事件だった。

 他にも、神戸で14歳の少年が起こした連続殺人事件や和歌山で主婦が起こした毒物カレー事件のイメージが散りばめられており、この事件を未解決事件として描くことで「停滞した平成」という時代を象徴させていた。

 漫画のはじまりは連載が開始された2017年という平成の終わり(当時は平成がいつ終わるのかわからなかった)だったが、ドラマ版では令和から平成を振り返るという構成になっており、それが「終わらない平成」というモチーフを、より際立っている。

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