王道の「タイムリープモノ」が功を成した? 『テセウスの船』深まる謎解き考察

タイムリープで読み解く『テセウスの船』

 また、本作ではミステリーパートを助長するようにタイムリープがうまく盛り込まれている。ミステリーの醍醐味といえば、張られた伏線をヒントに、その後の展開を謎解きしていく考察。本作では、山下智久の前に妖精が登場したり、山崎賢人がキスしたりするわけではなく、未だにタイムリープする仕組みが明かされていない。不明瞭なその仕組みは黒幕を推理する上で、色んな可能性を広げられる要素にもなっている。例えば、現に、タイムリープできているのは心さんだけではないかもしれないとも推測できるのだ。

 そして、タイムリープにより事件が起こる前の佐野ファミリーそれぞれの人柄や生活、そして関係性が明らかになっていき、心はどんどん家族への愛が深まり、どんどん感情移入して思いが熱くなっている視聴者も多いだろう。本筋のミステリーだけでなく、家族ドラマとしての感動も生まれる『テセウスの船』。犯人探しというわかりやすい楽しみ方に加えて、涙を流せる深みのある骨太さも持ち合わせる構造が、功をなした結果かもしれない。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

■岡田拓朗
関西大学卒。大手・ベンチャーの人材系企業を経てフリーランスとして独立。SNSを中心に映画・ドラマのレビューを執筆。エンタメ系ライターとしても活動中。TwitterInstagram

■放送情報
日曜劇場『テセウスの船』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:竹内涼真、榮倉奈々、安藤政信、貫地谷しほり、芦名星、竜星涼、せいや(霜降り明星)、今野浩喜、白鳥玉季、番家天嵩、上野樹里(特別出演)、ユースケ・サンタマリア、笹野高史、六平直政、麻生祐未、鈴木亮平
原作:東元俊哉『テセウスの船』(講談社モーニング刊)
脚本:高橋麻紀(「高」はハシゴダカが正式表記)
演出:石井康晴、松木彩、山室大輔
プロデューサー:渡辺良介、八木亜未
製作:大映テレビ、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/theseusnofune/

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