『レ・ミゼラブル』は「今までにない新しいことをやりたかった」 ラジ・リ監督の独自の映画哲学

『レ・ミゼラブル』監督の独自の映画哲学

「まだまだ問題は山積している」

(左から)市長役で出演したスティーヴ・ティアンチューとラジ・リ監督

ーーストーリーは監督の実体験がもとになっているそうですが、どこまでが実体験なのでしょうか?

ラジ・リ:全部です。すべて私自身の体験なんです。むしろ、私の体験のほうがハードだったと思います。実は、ラストシーンも私自身が自分の住んでいた場所で目にしたことなんです。なので、ラストは最初からああしようと考えていました。

スティーヴ・ティアンチュー:実はこの作品は3部作の第1弾と考えられていて、第2弾、第3弾の構想も彼の頭の中にはあるんです。だから、第2弾、第3弾のほうが、もっと厳しい現実というものが、より過激なかたちで描かれると思います。

ラジ・リ:それは決してフィジカルなバイオレンスが登場するということではなくて、そこに登場する家族たちの境遇が、もっと観ていて辛いものになるということです。

ーー監督の実体験のほうがハードだったということですが、それはいまのほうが当時より良くはなっているということでしょうか?

ラジ・リ:都市化などによって見た目的に美しくなった部分はもちろんあります。でも、教育面や文化的な予算が削られていき、子供たちが犠牲になっている面も大きいのです。すべてが悪くなっているとは言いませんが、まだまだ問題は山積しています。

ーーその現状を映画として映し出すことによって、少しでも現状を変えようとしているわけですね。

ラジ・リ:その通りです。この作品がより多くの人に観られることによって、そこでようやく政治家たちが動き始めるわけですから。

ーー最後に個人的に気になることを聞かせてください。映画はほとんど観ないということですが、最近観た作品で良かったものがあれば教えていただけませんか?

ラジ・リ:(笑)。『パラサイト 半地下の家族』は観ましたよ。素晴らしい作品でした。あと、政府軍とイスラム過激組織の対立が激化した1997年のアルジェリアにおいて、スタイリスト志望の女子学生がファッションショーを企画する模様を描いた『Papicha(原題)』というフランス映画も素晴らしかったです。主演女優(リナ・クードリ)は絶対にブレイクすると思います。

■公開情報
『レ・ミゼラブル』
公開中
監督・脚本:ラジ・リ
出演:ダミアン・ボナール、アレクシス・マネンティ、ジェブリル・ゾンガ、ジャンヌ・バリバール
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
原題:Les Miserables/2019年/フランス/フランス語/104分/カラー/シネスコ/5.1ch
(c)SRAB FILMS LYLY FILMS RECTANGLE PRODUCTIONS
公式サイト: lesmiserables-movie.com

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