『レ・ミゼラブル』は「今までにない新しいことをやりたかった」 ラジ・リ監督の独自の映画哲学

『レ・ミゼラブル』は「今までにない新しいことをやりたかった」 ラジ・リ監督の独自の映画哲学

 第72回カンヌ国際映画祭審査員賞に輝いた映画『レ・ミゼラブル』が2月28日より公開中だ。ヴィクトル・ユゴーの小説『レ・ミゼラブル』の舞台でもある、パリ郊外に位置するモンフェルメイユは、いまや移民や低所得者が多く住む危険な犯罪地域と化していた。犯罪防止班に新しく加わることとなった警官のステファンは、仲間と共にパトロールをするうちに、複数のグループ同士が緊張関係にあることを察知する。そんなある日、イッサという名の少年が引き起こした些細な出来事が大きな騒動へと発展。事件解決へと奮闘するステファンたちだが、事態は取り返しのつかない方向へと進み始めることになる。

 今回リアルサウンド映画部では、本作が長編デビュー作となったラジ・リ監督にインタビュー。映画的なバックグラウンドから、実体験に基づいているという本作について話を聞いた。なお、同席した市長役のスティーヴ・ティアンチューにもインタビューに参加してもらった。

「実はほとんど映画を観ていない」

ーーフランス映画としては非常に独特な語り口の作品だと感じました。まずはあなたの映画的なバックグラウンドを教えてください。

ラジ・リ:今回の作品は、自分でこれを撮りたいんだという強い意志がありました。しかも、これまで撮られてきたような作品のカテゴリーに入れられるようなことも絶対に嫌だったんです。私自身は、映画学校に通っていたわけでもなく、誰かに映画の技術を教えてもらったわけでもなく、ストリートが学校のようなイメージで、独学で映画を学んできました。では、シネフィルかと言われたら、そうでもないんです。実はほとんど映画を観ていません。私は今回、今までになかった新しいことをやりたいと思ったんです。私自身の撮影の仕方で、私ならではの作品を作りたいという思いが強くありました。だから、映画館に行って映画を観るという行為もなるべく避けていて、観るとしても飛行機の中とかでした。

ーーもともとドキュメンタリーを撮っていたあなたにとって、本作は初の長編劇映画となりましたが、劇映画を撮ろうという思いはいつ頃から芽生えたのでしょうか?

ラジ・リ:フィクションの長編映画を撮りたいという思いは最初からありました。ただ、それは物理的にもハードルが高かったので、ドキュメンタリーを撮り始めたんです。ですが、ドキュメンタリーには、なかなか作品を観てもらえないという欠点がありました。なので、より多くの人に観てもらうために、フィクションで、長編映画で、映画館で上映する作品を撮ろうと思うようになりました。

ーーテーマ的には社会的ですが、ドキュメンタリータッチな冒頭や、まるでアクション映画のような終盤など、ジャンルレスな作品だと感じました。

ラジ・リ:私自身、何かの枠組みにとらわれるようなことは避けたいんです。こういう作品を撮りたいというレファレンスもありません。自分の頭の中で「こう撮りたい」と思い描いているイメージに基づいて撮影をするわけです。非常に精度が高い状態で自分の中にイメージがあるので、それを映像化して、編集していくという作業になります。あなたが指摘してくれたように、最初はドキュメンタリーで、時にはジャンル映画だったり作家主義的だったりして、最終的にはアクション映画のようになるという見方は正しいと思います。でもそれは、自分の中で何かこういうふうにしようという意図があるわけではなく、私の頭の中で描いているものをそのまま映像化しているまでに過ぎません。

ーーとなると脚本はどうなんでしょう? 厳密に細かく書いているのか、それとも現場で指示をしていくのか。

ラジ・リ:脚本は非常に厳密に書いています。私が言ってもらいたいことを裏切っていない限りは、役者陣に自由に演技をしてもらっていますが、基本的には脚本の段階で固めています。最近脚本を読み直したのですが、とても厳密に映像化していたので、自分自身で驚いたぐらいです。

ーースティーヴさんはこれまで他の監督の作品にも出演されていますが、ラジ・リ 監督の現場はどのようなものでしたか?

スティーヴ・ティアンチュー:私自身は、しっかりと役を理解して、作り込んで、提案するかたちで現場に臨むことを自分の中で義務付けているんです。その提案を、監督たちが取捨選択することによって、人物像を作り上げていくイメージですね。でも今回は、私自身もよく知っている地区の話で、監督自身もしっかりテーマを設定してコントロールした現場だったので、どういう動きをすればいいのかは自然と分かりました。容易だったというのは言い過ぎかもしれませんが、とてもうまくいったと思います。フランスにおける黒人の役割は、悪役だったり性格が悪いというのがステレオタイプなので、そういうふうにはならないようにしようとは気に留めていました。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

音楽記事ピックアップ