『惡の華』は女子こそ観るべき“男子トリセツ“映画だ 特典のオーディオコメンタリーも必聴!

『惡の華』から学ぶ“男子トリセツ“

 他者が作り上げた理想の少女になろうと努力してきた佐伯も、制御できない性と闘う仲村も、自分を持っている(ように見えた)春日に、生きづらい日々を救ってほしいと願った。だが、そう期待した春日に「僕は空っぽだ」なんて言われたら、ガッカリだ。それは、彼自身にというよりも、入れ上がった自分の見る目のなさに幻滅するのだ。

 そんなガッカリを繰り返し、少し前の自分自身を抱きしめながら、女子たちは常磐のように大人の女性になっていく。男からの視線も、周りからの求められるキャラも理解し、その上で自分の感情とも向き合って整理していく強さを持つ。もう、彼女たちは春日に「向こう側」に連れて行ってほしいなんて言わない。仲村との思い出に立ち止まったまま動けない春日に、自分の恋の行方を委ねたりしない。

 春日と仲村の再会も、しっかりと自分の目で確かめる。佐伯も、今の春日と常磐を直視する。仲村も然りだ。その目をそらさずに痛みと向き合うこと。いつまでもうずくし、絶対に忘れたりはしないけれど、そのジュクジュクしたものを別フォルダに整理した現実こそが「向こう側」だと知っているから。

 この映画のヒロイン=女子が全部いるのだ、女の中には。それを「常磐と結婚したけど、ときには仲村といるときのようなリビドーもほしい」「やっぱり女は佐伯のように清純じゃないと」とかいうクソムシが、大人になってもいるようだが……。

 ちなみに本作には、伊藤健太郎×玉城ティナ×井口昇監督のビジュアルコメンタリーを収録した特典ディスクに加えて、ディスク2には、劇場公開版では描かれなかったシーンが追加された特別編集版『惡の華+』も。原作者・押見修造と監督・井口昇によるオーディオコメンタリーを聞きながら楽しむこともできる。

 そのコメントを聞きながら、ハッキリとわかった。この物語は「かつて男子」が、かつての自分を懐かしむ青春映画に感じるかもしれないが、男たちの青春はまだまだ終わってないのだ。笑ってしまったのが、ミューズ・佐伯の自宅に春日が見舞うシーン。「やっぱり女の子にはピンクのパジャマを着ていてほしい」と盛り上がる自称「かつて男子」2名がそこにいた。佐伯を演じた秋田汐梨が「着たことない」と言ったにもかかわらず、その夢を捨てられないようだ。

 さらに、「男の子が入ってきたら“キャッ“て言ってほしい」という願望を伝え、その“キャッ“を井口監督自ら3回ほど実演。その熱意に秋田は「うーん……わかりました」と渋々了承して、このシーンが完成したというから、おかしい。「監督が誰よりも女子ですからね」「ありがとうございます! 俺の中の女子はこうするっていうのを、“いやーやんないですよ“って言われることが度々あるんですけど」のやりとりには、呆れるやら、微笑ましいやら。

 「かつて女子」たちは、心したほうがいい。彼らは今も黒歴史の中にいる。小難しい言葉を並べて背伸びして、空っぽの自分を隠しているかもしれない。そんな男たちの理想に収まる必要はない。また、彼らに自分の幸せの舵を委ねるのも危険だ。常磐のように落ち着いて相手を見つめ、ときには佐伯のようにあざとく彼らの期待に応えながら、仲村のように自分の思うままに生きるのだ。『惡の華』は、かつて女子こそ見るべき、現在進行系の“男子トリセツ“だ。

■リリース情報
『惡の華』
3月3日(火)Blu-ray&DVD発売
レンタル・配信中
豪華版 Blu-ray:8,800円(税別)
通常版 Blu-ray:4,800円(税別)
豪華版 DVD:7,800円(税別)
通常版 DVD:3,900円(税別)

【特典情報】※豪華版の特典内容
<外装・封入特典>
・押見修造描きおろし三方背BOX&デジスタック仕様
・ポストカード8枚セット

<映像特典>
【DISC1】
・特報
・予告
・TVスポット
・WEB限定スポット(2種)
【DISC3】
・ビジュアルコメンタリー(伊藤健太郎×玉城ティナ×監督:井口昇)
【DISC4】
・メイキング
・イベント映像

<音声特典>
【DISC2】
・オーディオコメンタリー(原作:押見修造×監督:井口昇)

※豪華版は【4枚組】となり、下記構成。
Disc1 『惡の華』本編&予告集 バリアフリー日本語字幕付
Disc2 『惡の華+』本編 オーディオコメンタリー付(監督:井口昇&原作者:押見修造)
Disc3 『惡の華』本編ビジュアルコメンタリー(伊藤健太郎&玉城ティナ&監督:井口昇)
Disc4 『惡の華』メイキング&イベント映像集

監督:井口昇
脚本:岡田麿里
原作:押見修造『惡の華』(講談社刊)
出演:伊藤健太郎、玉城ティナ、秋田汐梨、飯豊まりえ 
製作:ハピネット、NTTぷらら、ファントム・フィルム、角川大映スタジオ
製作幹事:ハピネット
共同幹事:NTTぷらら
製作プロダクション:角川大映スタジオ
配給・宣伝:ファントム・フィルム
発売・販売元:株式会社ハピネット  
(c)押見修造/講談社 (c)2019映画『惡の華』製作委員会
公式サイト:akunohana-movie.jp

伊藤健太郎、玉城ティナ、秋田汐梨、飯豊まりえ、井口昇監督サイン入り
『惡の華』サイン入りプレスを5名様にプレゼント

 ※当選後、住所の送付が可能な方のみご応募ください。個人情報につきましては、プレゼントの発送以外には使用いたしません。
※複数のお申し込みが発覚した場合、ご応募は無効とさせていただく場合がございます。

応募方法は以下のとおり。

応募方法

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<応募締め切り>
3月11日(水)

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