『スマホ2』は白石麻衣の大きな転換点に? 中田秀夫監督が引き出した“奥にある強さ”

『スマホ2』が引き出す白石麻衣の“強さ”

 今回の美乃里というキャラクターは、現代的なネット社会の闇に飲み込まれていくという点において一昨年主演を務めた『世にも奇妙な物語』(フジテレビ系)の一編『フォロワー』に通じるものがあるだろう。同作ではSNS上で虚栄を張りつづける主人公が、自分を支持してくれるフォロワーからのネットストーキングによって追い詰められていく姿が描かれていた。もっとも、同作では孤独な戦いを強いられていくのに対して、今回の『スマホ2』では加賀谷という存在が近くにあり、彼に守られるだけでなく時には自ら囮になって力を貸すことも厭わない強さを備えた役柄として描かれており、大きな違いが見受けられる。短編と長編の違いはあれども、華やかな見た目だけに留まらずに、その奥にある強さを引き立たせるというのは、『クロユリ団地』や『劇場霊』などでアイドル女優を魅力的に描き出した中田秀夫監督ならではといえよう。

 すでに乃木坂46を卒業しているメンバーでは、西野を筆頭に『パンとバスと2度目のハツコイ』や『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系)などのロマコメ作品を中心に存在感を示す深川麻衣に、舞台劇からコメディ、シリアスまで幅広くこなしている若月佑美ら、いずれも女優としてのキャリアを順調に伸ばしているわけだが、白石も彼女たちに追随するだけの逸材なのはいうまでもない。前述の完成披露の舞台挨拶では「これからもたくさん演技をしていきたい」という女優業への強い意気込みも語っていた白石。名前の後ろに“(乃木坂46)”と付かなくなってから、白石麻衣はどんな女優へと成長していくのか大いに楽しみである。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』
全国東宝系にて公開中
出演:千葉雄大、白石麻衣、成田凌
原作:志駕晃『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』(宝島社文庫)
企画プロデュース:平野隆
監督:中田秀夫
脚本:大石哲也
制作プロダクション:ツインズジャパン
配給:東宝
(c)2020映画「スマホを落としただけなのに2」製作委員会
公式サイト:http://sumaho-otoshita.jp/
公式Twitter:@sumaho_otoshita

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