J・T・リロイを演じた張本人 サヴァンナ・クヌープに聞く、事件の映画化秘話と現在の心境

J・T・リロイを演じた張本人が当時を語る

 映画『ふたりのJ・T・リロイ ベストセラー作家の裏の裏』が2月14日に公開される。本作は、アメリカ文壇に彗星のごとく登場し、世界的なセレブリティやアーティストから熱烈に支持されるも、実はふたりの女性が創り上げた架空の人物だったという、2000年代半ばに一大スキャンダルとなった美少年作家“J・T・リロイ”にまつわる事件を、J・Tに扮したサヴァンナ・クヌープの視点から映画化したもの。

 今回リアルサウンド映画部では、原作・脚本・製作総指揮を務めたサヴァンナ・クヌープに電話インタビューを行い、監督を務めたジャスティン・ケリーやサヴァンナを演じたクリステン・スチュワートとのやりとりから、当時の事件についてや現在のローラ・アルバートとの関係性まで、単刀直入に聞いてみた。

「映画を観ると、いろんな人に対して同情心が生まれる」

ーー今回の作品には、原作だけでなく脚本と製作総指揮としても参加されていますね。

サヴァンナ・クヌープ(以下、クヌープ):もともとやるつもりはなかったんです。きっかけは、あるパーティーで監督のジャスティン・ケリーと出会たことでした。彼はすごく“いい人”という印象で、私の回想録をもとに映画を作りたいと思ってる人がいるという話をしてくれました。それで、ジャスティンから「一緒にやらないか?」と提案されたんです。彼とは出会ってから友情を育んでいったので、その友情が大きかったですね。作業自体は、数カ月おきに会って、お互いに脚本のドラフトを見せ合って、映画へのピースをつなげていくというものでした。完成まで予想以上に時間がかかってしまいましたが、言い換えれば、十分な時間があったとも言えますね。そのおかげで、より細かいところまで詰めることができました。製作総指揮のクレジットに関しては、「いろんなことをやってくれた」ということで、ジャスティンがとりあえずあるものをくれた感じですね。

ーーキャスティングにはどの程度関わったのでしょう?

クヌープ:キャスティングには少し関わりました。ローラ(・ダーン)に関しては、私たちが何年も前に作っていたルックブックの中で、彼女をローラ役のイメージとして入れていたんです。ローラをはじめ、クリステン(・スチュワート)やダイアン(・クルーガー)たちをキャスティングできたのは、純粋に嬉しかったですし、すごく光栄なことでした。

ーー映画の中ではクリステン・スチュワートがあなたの役“サヴァンナ”を演じていますが、彼女とは何か話をしましたか?

クヌープ:役について何か具体的に話すことはありませんでした。ただ、私はずっと撮影現場にいたんです。クリステンは観察力があって人の動きを捉えるのがうまいので、私がそばにいるだけで、いろんなことを私から吸収したんだと思います。ひとつだけ言ったのは、“オープンさ”についてです。誰か他のキャラクターを演じるにはオープンさが必要だと思うので、それについては私の方から彼女に伝えました。結果的にクリステンは、高潔さと誠実さ、そして敬意をもって、複雑なストーリーの中で生まれる矛盾した感情を素晴らしく捉えていました。ある意味、“奇跡”だと思いましたね。自分自身の過去を映画にして、ある種のフィルターをかけて見ることには、少し躊躇めいたこともあると思ったのですが、クリステンが演じてくれたおかげで、そういうことを感じませんでしたから。

ーーダイアン・クルーガーが演じたエヴァは、『サラ、いつわりの祈り』の監督を務めたアーシア・アルジェントがモデルですよね。実際、彼女との関係はどのようなものだったのでしょう?

クヌープ:彼女との関係はとても複雑なので、あまりコメントすることはできません。非常に興味深いのは、映画を観ると、人それぞれいろんなことを思ったり考えたりすることです。私が映画を観て思うのは、エヴァの役に同情や思いやりを感じること。彼女は当時とんでもない状況にいたんだなと、少しかわいそうにも思えるわけです。映画を観て芽生える同情心は、彼女だけでなく、いろんな人に対して生まれるもので、それほど当時の状況は複雑だったんです。本には全部書いてあるので、詳しくはそちらを読んでいただけると(笑)。

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