『なぜオスカーはおもしろいのか?』著者が明かす、第92回アカデミー賞授賞式の注目ポイント
ライムスター宇多丸の『アフター6ジャンクション』(TBSラジオ)内のアカデミー賞予想コーナーで有名なMs.メラニーが、1月24日に書籍『なぜオスカーはおもしろいのか? 受賞予想で100倍楽しむ「アカデミー賞」 』(星海社新書)を刊行した。本書は、「オスカー予想屋」として活動するMs.メラニーが、歴代の授賞式における選りすぐりのエピソードを紹介しつつ、自身が実践している受賞予想のテクニックを余すことなく伝える一冊だ。
今回、著者であるMs.メラニーにインタビューを行い、2月10日(日本時間)に開催される第92回アカデミー賞授賞式の注目ポイントや、オスカーの近年の動きなどを語ってもらった。
今年の作品賞は一強不在?
――Ms.メラニーさん独自の予想メソッドは、いつ頃から確立されてきたんですか?
Ms.メラニー:実は、あまり独自メソッドと思ったことはありません。本にも一応独自メソッドと書いてますが、本来オスカーが好きな人は誰でもやっていることなのではないかなと思うので。オスカーの予想は2000年くらいから続けていて、数を重ねるにつれ、少しずつテクニックが増えてきた感じです。
――一緒に予想する仲間がいるということも本に書かれていました。そういう人たちと、自分の考え方を話し合ったりすることはありますか?
Ms.メラニー:もちろんです。本にも出てくるローリーという20年間ぐらい一緒に授賞式を見ている友達がいます。映画業界の中でも1番趣味が合う友達ですが、12月の前哨戦開始から2月にかけては、連絡の頻度が上がります。「今年はこれがきそうだね」ぐらいのところから、ゴールデングローブ賞のノミネーションがあって、「ゴールデングローブはこれが漏れたね」という感じで。
――ローリーさんの意見を聞いて、自分の予想を変えたりするんですか?
Ms.メラニー:常時調整します。例えば今年の作品賞は、『1917 命をかけた伝令』(以下、『1917』)と『パラサイト 半地下の家族』(以下、『パラサイト』)が1歩抜け出た状態になっていて、その下に『アイリッシュマン』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』『ジョーカー』があります。でも、今年の作品賞ノミネート作品で、特に強いと言われている作品は、何かしら足りない点があり、「絶対これ」と言いにくい状況です。そんな中、どんなロジックで、今のところどこに注目しているのかは、お互いに話しますね。
――“完璧な作品がない”というのは具体的にはどんなところが?
Ms.メラニー:例えば『ジョーカー』は、11部門に最多ノミネートされていますが、アメコミ作品というのが弱点です。『アイリッシュマン』は、前哨戦で賞を獲れていません。『1917』は役者が1人もノミネートされていないのが実は大きなポイントで、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は一見強そうに見えますが、第72回カンヌ国際映画祭のコンペティションの際に、『パラサイト』との対戦に敗れていますし、重要な組合賞での受賞が足りません。
――ちなみにメラニーさんはどの作品を推しているんですか?
Ms.メラニー: 『パラサイト』です。単純に1番面白かったので。
――俳優部門に入っていないという点では『パラサイト』もそうですよね。
Ms.メラニー:そうですね。でも、『パラサイト』はそんなことよりも、外国語映画ということが致命的なハンデです。
――書内では、戦争映画や実話モノはアカデミー協会員のウケがいいと書かれていました。『1917』はそういった観点からいかがでしょう?
Ms.メラニー:『1917』は戦争映画ではありますが、私の著書にある「アカデミー協会員のウケがいい」戦争映画は主に、第二次世界大戦のナチスドイツの話を指します。第一次世界大戦を描いた作品は、今までオスカーの歴史を見てきても珍しいので、あまり比べられず、分からないところがあります。実在の人物という意味では、主演女優賞はおそらくジュディ・ガーランドを演じたレネー・ゼルウィガーが獲るのではないでしょうか。今年は珍しく、実在の人物が少ないですね。