『なぜオスカーはおもしろいのか?』著者が明かす、第92回アカデミー賞授賞式の注目ポイント
一番の魅力は受賞スピーチ
――全体を通して、30年でアカデミー賞のここが変わったと感じるところはありますか?
Ms.メラニー:俳優賞において、有色人種のノミニーが増えたことでしょうか。最初に見た年に、デンゼル・ワシントンが初めてのオスカーを獲ったのですが、それがすごい大ごととして扱われていました。黒人受賞者として4人目だったんですよ。62回の歴史で4人しか獲っていないのは、大きいですよね。2000年代以降では、俳優賞の受賞者が白人だけだと違和感を感じるくらいまでになりました。
――昨今、ダイバーシティやインクルージョンが強く意識されていますが、当てる側として何か感じることはありますか?
Ms.メラニー:やはりダイバーシファイされたことで、投票者がどういう作品を選ぶ傾向にあるみたいものは、すごく分かりにくくなりました。『ムーンライト』が作品賞を獲るなんて絶対に予想できなかったし、確実に難しくなっています。選ぶ人が多様になったことで、傾向がなくなった。予想屋としては外す確率が高くなったなと感じます。
――昔に比べたら確率が下がっているんですか?
Ms.メラニー:作品賞の確率は格段に下がっています。私、作品賞は4年連続で外してるんです。作品賞を当てたのは『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』が最後で。全然分からなくなったので、しょうがないと思って、あまり気にしてはいませんが。
――今年は脚本賞に注目してるというお話でしたが、主要5部門以外の注目ポイントは他にありますか?
Ms.メラニー:すごく難しいのは長編アニメーションですね。『トイ・ストーリー4』なのかなと思っていたのですが、まずゴールデングローブ賞が『Missing Link(原題)』で、PGA(全米製作者組合賞)は『トイ・ストーリー4』を選びました。その上、アニメーションで1番頼りになるアニー賞が、Netflixの『クロース』で。3賞全部違う作品にいくのが、ほとんど今までに経験がない状況になっているので、よく分からないのが本音です(笑)。
――長編アニメは当てづらそうですね。
Ms.メラニー:そうですね。作曲賞も、まだ少しどうしていいか分からない感じです。『1917』が下馬評では1番強いと言われているのですが、どうなのかなと。あと、『ジョーカー』が女性の作曲家(ヒドゥル・グドナドッティル)なので、その辺りがどう作用するか。なので、迷っているわけですけど。
――それでも、必ず1個に絞って毎年挑んでいるんですね。
Ms.メラニー:もちろんです。その日の朝には完成させて挑みます。今回、アカデミー賞のスケジュール自体が早いんです。いつもより2週間ぐらい早いので、時間が足りなくて。いつもなら1月末ぐらいから勉強すればいいんですけど、もうほぼ最後の1週ぐらいのところまできちゃっていて……。本を出した年がワーストみたいな結果になるんじゃないかと思っていて、当日を迎えるのが怖いです。
ーー最後に、Ms.メラニーさんの考えるアカデミー賞の魅力を教えてください。
Ms.メラニー:授賞式そのものの楽しさは、招待者のきらびやかなドレスなど魅力はたくさんありますが、何よりもやはり受賞スピーチが1番の見どころです。スピーチは本当にすごく細かい賞まで全部ちゃんと聞く。それこそ短編映画賞など細かい部門の受賞者に名スピーチが生まれたりするのです。そういった部分を、ローリーさんと2人で「今のスピーチよかったね」みたいなことを言いながら観るのが、私は一番楽しいですね。
■Mis.メラニー
アカデミー賞ウォッチャー。映画会社に23年間勤務しながら、1989年から30年に渡りアカデミー賞を見続けている会社員。アカデミー賞受賞予想がライフワーク。2017年2月にTBSラジオの人気カルチャー番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(現在は「アフター6ジャンクション」)に“オスカー予想屋”として初登場。以来、アカデミー賞シーズンの風物詩ゲストとなっている。その的中率は驚異的で、2018年第90回アカデミー賞では、全24部門中21部門の受賞を的中させた。Twitter
■書籍情報
『なぜオスカーはおもしろいのか? 受賞予想で100倍楽しむ「アカデミー賞」』
星海社新書
著者:メラニー
定価:本体960円+税
サイズ:新書判
全国の書店・ネット書店にて販売