『スカーレット』信作がいよいよ「男としてけじめをつける」 八郎を巡る問題はさらに深刻化
『スカーレット』(NHK総合)第86回。創作に悩んでいた八郎(松下洸平)に喜美子(戸田恵梨香)は銀座の個展をやめようと言うが、八郎は作陶を続けていた。そんな八郎のかたわらで、三津(黒島結菜)が誰ともなく話しはじめる。
年明けから登場した三津は、喜美子とは違う意味で陽性のキャラクターだ。燃えさかる炎のような気質をのぞかせる喜美子に対して、三津の場合は現代っ子的な天真爛漫さが持ち味。八郎に対しても自分の思いついたアイデアを次から次へと投げかける。八郎は、三津が話す洋式化された都会の生活と食卓に並ぶディナーセットに関心を示す。
似たところもある喜美子と三津は今の八郎にとって正反対の存在だ。知識も経験も自分より下だと思っていた喜美子には知らないうちに並ばれてしまい、その愚痴を三津にこぼすようになった。追い込まれている八郎に喜美子の優しさは刺さるが、良い意味で計算のない三津には気を遣う必要がない。作陶に興味津々の三津に、八郎は「一回だけな」と言ってろくろにも触らせる。
正面から向き合って息が詰まるような関係になってしまった喜美子と八郎の間には、なんとなくよそよそしい空気が流れている。遠慮せず会話ができる三津と対照的で、見ているこちらも落ち着かない気持ちになった。
もう一組の渦中のカップル“信百合”こと信作(林遣都)と百合子(福田麻由子)のほうは、優柔不断すぎて異性から水をかけられまくってきた信作が、いよいよ「男としてけじめをつける」段階へ。前話でべろべろになって帰ってきた百合子だったが、実は陽子(財前直見)たちも一緒だった。喫茶サニーで陽子がため息をついていたのは、二日酔いだけではなく、あの人の不在も理由だった。「こんな嬉しいことないわ」と噛み締めつつも、「常治さんがいてくれたらなあ」とつぶやき、夫の忠信(マギー)も同意する。
喜美子と八郎が結婚する際、あれほど反対し、会うことを拒み続けた常治(北村一輝)はステレオタイプな父親そのものだったが、男気のある一面もあった。娘の幸せを願う気持ちから、八郎にしたように、信作にも「『冗談やない! 誰がお前なんかに渡すか』言うて門前払いしてくれたわ。あんたにそういう厳しい目に遭わせてほしかったんよ」と陽子。「相変わらず分からんとこある」と喜美子が評する、どこか煮え切らない一人息子の将来を案じる親心が沁みた。と同時に、無二の親友である常治にも2人の晴れ姿を見せたかったのだろう。今はなきちゃぶ台返しを懐かしむ大野家であった。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/twitter
■放送情報
NHK連続テレビ小説『スカーレット』
2019年9月30日(月)〜2020年3月28日(土)放送予定(全150回)
出演:戸田恵梨香、富田靖子、大島優子、林遣都、松下洸平、黒島結菜、伊藤健太郎、福田麻由子、マギー、財前直見ほか
脚本:水橋文美江
制作統括:内田ゆき
プロデューサー:長谷知記、葛西勇也
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/scarlet/