ポストジブリという問題設定の変容、女性作家の躍進 2010年代のアニメ映画を振り返る評論家座談会【後編】

テン年代、そして来たる2020年代に向けて

――2020年代はアニメにとってどんな時代になるのでしょうか。

藤津:まず2019年は「2016年の後にどういうものを作ればよいか」という年でした。バラエティに富んだ作品が出たことで、今後いろんな人たちが映画を作る流れを持続できると思うんです。そうなると、2022年くらいまではアニメ映画がいろいろ出てくるフェーズになるかもしれません。百花繚乱な時代というか、クリエイターたちが「どういう人に向けてどのようなアニメを作るべきか」という問題を解こうとするシーズンは続くのではないでしょうか。

杉本:いろんなところからいろんな角度でアニメ作品が作られていきそうですね。あと2019年は海外のアニメーションが目立っていたので、そういう流れが続くと良いなと個人的に思っています。海外のアニメーションが元気なこととも関連するかもしれませんが、2020年代はアニメーションの個人作家の躍進する時代になるのではと思っています。スタジオに関しては、ufotableに改めて注目しています。スタジオとしての実力は折り紙つきですが、『劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song』と『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の2本の興行成績次第で、世間の認知度的に1つ上のステージに行くことになるかもしれないと期待しています。

渡邉:2010年代は2016年を1つの軸として、映像文化の中でアニメの立ち位置、実写とアニメの関係性が変わってきたと思います。これまでオーソドックスな日本映画史の見取り図だと1930年代と50年代が重要でそこに軸足を置いてきました。1930年代は戦前で言えば日本映画の最初の黄金期で、クラシックな映画が確立された時期で、50年代は黒澤明らが国際的に評価されたり撮影所システムが全盛期だった頃です。でも結局これは、実写中心の考え方で、アニメは長らくマイナー文化でした。でもそれを転換して考えないとこれからの映像文化の本質はつかめない。これは僕の持論ですが、日本映画史の見方で、いま言った奇数のディケイドを横にずらすべきだと考えています。つまりこれまでは30年代と50年代が重要でしたが、これからは70年代と90年代、つまり角川映画のメディアミックスとアニメブームでアニメが市民権を獲得した70年代と、『エヴァ』やスタジオジブリの黄金期である90年代。そうすると、70年代90年代、そして2010年代ときれいに収まるんですよ。10年代はそういう意味で、後から振り返った時に映画史の見方や、いろんなジャンルがドラスティックに切り替わった時代なので、それを20年代でどう総括していくのか考えたいなと思っています。

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