佐藤健が変幻自在に操る“瞳”の魔力 ドラマ・映画と2020年は俳優としての充実期へ

佐藤健、2020年は俳優としての充実期へ


 昔の俳優はイメージを大切にして、似た感じの役をやり続けることも少なくなかったが、最近の俳優は皆、そうやって消費されてしまうことを避け、幅広い役をやって自身の可能性を広げている。佐藤健も、ここしばらく映画の人という印象が強くなっていたところ、『半分、青い。』でテレビドラマに復活した後(その前は15年『天皇の料理番』だった)、律のイメージと違う、憎めないお調子者的な役・麦田を選び、それもまた支持された。たとえ、『ひとよ』の雄二とは違うエロネタ大好きの下世話な役を演じることになったとしても、それはそれでしっかり演じてしまうのだろう。要するに職人俳優なのだ。が、しかし、顔立ちがすっときれいなため、イケメンスターみたいなイメージを抱かれがちで、平凡なあんちゃん的な役を演じることよりも、どこか超越した役を演じることを期待されていくようになっていったのではないか。確実に期待に応えてしまうからさらにそっちのほうの需要が増えていく。たとえ市井の若者を演じても、どこか神聖さがついてくる。たくさんの観客を泣かせた『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17年)の恋人を献身的に看病する役も、本来ごく平凡な生活者だったが、8年恋人だけを見つめ続ける修行僧のような人物と化していく。半眼にして祈るように演じ続けてきたなかで、ようやくたどりついた、肩肘張らない、重い十字架を背負わない麦田。たまにはテレビドラマで明るい役を演じつつ、また違う役もやる。佐藤健が俳優としてますます充実する時である。『るろうに剣心』の最終章も期待しているし、火曜ドラマ『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)では“魔王”と呼ばれるドSドクター役という、今からそこへ行くか! という属性への挑戦は、どんな役でもやれるというある種の余裕すら感じる。神経質そうに眉間に皺を寄せて、薄目で人を見る顔が見えるようだ。佐藤健の半眼の魔力はいつだって最大限に力を発揮する。

■木俣冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメ系ライター。単著に『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説なつぞら 上」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など、構成した本に「蜷川幸雄 身体的物語論』(徳間書店)などがある。

■番組情報
『義母と娘のブルース 2020年謹賀新年スペシャル』
TBS系にて、2020年1月2日(木)21:00〜放送
出演者:綾瀬はるか、竹野内豊、佐藤健、上白石萌歌、井之脇海、横溝菜帆、武田鉄矢、橋本さとし、吉川愛、奥貫薫、谷口翔太、宇梶剛士、浅利陽介、浅野和之、麻生祐未
原作:桜沢鈴『義母と娘のブルース』(ぶんか社刊)
脚本:森下佳子
プロデュース:飯田和孝、中井芳彦、大形美佑葵
演出:平川雄一朗
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gibomusu_blues/

火曜ドラマ『恋はつづくよどこまでも』
TBS系にて、2020年1月スタート 毎週火曜22:00~22:57放送 
出演:上白石萌音、佐藤健、毎熊克哉、昴生(ミキ)、渡邊圭祐、吉川愛、堀田真由、香里奈、平岩紙、蓮佛美沙子、山本耕史
原作:円城寺マキ『恋はつづくよどこまでも』(小学館 プチコミックフラワーコミックスα刊)
脚本:金子ありさ
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:宮﨑真佐子、松本明子
演出:田中健太
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/koitsudu_tbs/
公式Twitter:@koi_tsudu

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