『おっさんずラブ-in the sky-』成功の鍵は戸次重幸が握っていた!? “切ない担当”=四宮に幸あれ
『おっさんずラブ-in the sky-』(テレビ朝日系)で特に感情移入してしまう登場人物は、戸次重幸が演じる四宮要だ。
思い返すと、『-in the sky-』の初回はピリピリしていた。新人CA・春田創一(田中圭)に当たりが強い先輩CAたち。まだ周囲に壁を作っていた成瀬竜(千葉雄大)。春田は2度も顔面にコーヒーをぶち撒けられたし、「優しい世界」と認識していた同作の世界観と異なる展開には戸惑ったものだ。
そんな中、初登場から人柄の良さがだだ漏れしていた四宮は救いの存在だった。また、前作で春田と結ばれた牧凌太(林遣都)のツンデレ成分は成瀬へ、料理上手という要素は四宮へ受け継がれた? とも我々は勘繰った。何しろ、春田は胃袋を掴まれるタイプだ(もっと言えば、シノさんという愛称は『きのう何食べた?』(テレビ東京系)のシロさんに掛けた? ともよぎった)。まだ『-in the sky-』の雰囲気に据わりの悪さを感じていた頃、四宮だけは心の拠りどころだったのだ。
初回でこんなやり取りがあった。成瀬から突然キスされた春田は、そのことを四宮に愚痴り、「だってシノさん、俺とキスしろって言われてできます?」と質問。すると、四宮は真顔で「できるよ」と返答。察しの悪い春田が「え?」と戸惑うと「なんてな。やめろ、お前(笑)。ないないない!」と即座に否定したくだりである。あの瞬間、「彼がこのドラマの“切ない担当”なんだな」と認識した。そして、「このドラマの成功の鍵は四宮に掛かっている」と確信した。春田と結ばれるにしろ恋破れるにしろ、彼を応援しようと心に決めた。
ストーリーが進むほど、四宮の切なさは深度を増していく。隠れて描き溜めていた春田のデッサンが風に舞い、必死でかき集める四宮の姿に、もう感情移入していた。「気付かないでくれ、気付かれると春田との関係が壊れてしまう!」。四宮は秘めた恋をしようとしていたのだ。
春田に対してだけじゃない。四宮がしてきた恋はずっと秘めたものだった。橘緋夏(佐津川愛美)とカフェで食事していたとき、ショートケーキの苺を緋夏に取られた四宮は「ああーーっ! それは、最後に取っておいた……」と錯乱。緋夏が謝罪すると「緋夏ちゃんは悪くない。こんなもの最後まで取っておく俺が……。いっつもそうだよぉ!」と自分を責めた。彼の今までの人生が、このシーンに凝縮されている。好きな人がいても、彼は手を出さずに見守るだけ。そして最後は他の者に取られてしまう。しかし、想う気持ちは大きいから「ああーーっ!」と行き場のない感情が爆発。おそらく、彼はいつもそうだった。思わず、天空不動産から武川政宗(眞島秀和)を呼んできて「相手の幸せのためなら自分は引いてもいいとか、どっかのラブソングかよ。そんな綺麗事じゃねえだろ、恋愛って」と説いてほしくなる。取られてあんなに悔しがるのなら、自ら手を伸ばすべきなのに。
4話の卓球大会で春田への想いをばらされてしまった四宮。春田から「俺なんかの、どこが……いいの?」と問われたが、四宮はこの期に及んで「誰がお前なんか」と一笑に付した。もう、全てが切ない。「お前なんか~」と人を貶める発言は、あまりに四宮らしくない。嘘がバレバレなのだ。でも、彼は「俺には幸せになる資格がない」と頑なだった。