『おっさんずラブ-in the sky-』成功の鍵は戸次重幸が握っていた!? “切ない担当”=四宮に幸あれ

『おっさんずラブ』四宮要の“切なさ”の足跡

 「幸せになる資格がない」と口にする理由は、別れた妻子にある。断りもなく家を出ていった元妻の蘭(松島花)。四宮は自分のセクシャリティが原因と考え、責任を感じていた。

 そういえば、『きのう何食べた?』でも第2話で、シロさん(西島秀俊)が女性との交際歴を告白していた。「もしあのまま仁美と付き合い続けていたら、俺、結婚とかしてたかもしれない。子どもだってできてたかもしれない。でも、ゲイであることはやめられないから、奥さんと子どもを裏切って彼氏作って。それでも家族を捨てられないから、結局、彼氏のことも傷つける。そういうの、続けてたと思う……。ゾッとするよ。仁美には悪いことしたって反省してる」。

 一方、成瀬は四宮の離婚歴について理解を示した。「別に、あるあるじゃないですか。恋愛対象が同性でも、普通に家族欲しいっていう人はいっぱいいますよね」。

 シノさんは、まさしくシロさんのifの姿を体現していたのかもしれない。それら全てを背負ったからこその切なさ。でも、蘭はシノさんがゲイだと知っていたし、それでもシノさんに結婚してもらいたかった。だから、「要と結婚したこと後悔してないよ」と告げた。自分を縛り付けていた過去と決別し、シノさんが前へ進めた瞬間だ。

 そして、シノさんは春田に告白をした。「まずはお試しで1週間、一生のお願い!」。今まで切ないキャラだったシノさんが、ようやく前に出た! このお試し1週間は、ババ抜き形式で進んでいく。春田が1枚カードを引き、そこには四宮が考えたイベントが書いてある。それを2人で実行する7日間だ。しかし、春田に心変わりは訪れなかった。四宮を“良い先輩”としか思えなかった。そして、最後の7日目。四宮が用意したイベントは「手をつなごう」だった。お試し期間の勝算が2パーセントと踏んでいた四宮は「1週間の思い出をありがとう」の思いを込め、手をつなぐのではなく春田と“握手”した。そして春田の気持ちを察し、「俺は春田とは付き合わない」と自ら引き下がった。四宮には久々のチャンスだったはずなのに、そんな貴重な1週間を彼は彼らしく理性と優しさで締めくくった。

 四宮を密かに想っているのは成瀬だ。四宮は成瀬から告白された。しかし「いいかげん諦めてくれ、迷惑だ!」とキツい言い方で跳ね除けた。四宮のことを知る我々なら、彼の意図が丸わかりである。成瀬を自分から遠ざけ、春田の恋心を成就させてやりたい。四宮は自分の幸せより他者の幸せをいつも優先する。公園で成瀬を発見した春田は、成瀬と手をつないだまま寮に帰ってきた。その姿は四宮との握手とコントラストになっている。ここまで切なくさせると、観ているこっちが辛くなってくるのだが。

 21日放送の第8話で『おっさんずラブ-in the sky-』は最終回を迎える。視聴者からの応援を背に受けてきた四宮だが、今まで彼には切ないシーンしかなかった。それはそれで寂しい。四宮の自己犠牲がいつか報われてほしいという気持ちも少しある。着地点が全く予想できない最終話、四宮はどんな表情をしているのだろう?

 筆者にとって四宮は、今でもこのドラマの拠りどころだ。全8話が終わった後、『おっさんずラブ-in the sky-』は、余韻として四宮要の印象が大きく残る作品になっている気がする。

■寺西ジャジューカ
1978年、東京都生まれ。2008年よりフリーライターとして活動中。得意分野は、芸能、音楽、(昔の)プロレス系、ドラマ。『証言UWF』(宝島社)に執筆。Facebook

■放送情報
土曜ナイトドラマ『おっさんずラブ-in the sky-』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:15~24:05放送
出演:田中圭、千葉雄大、戸次重幸、佐津川愛美、木崎ゆりあ、鈴鹿央士、片岡京子、MEGUMI、正名僕蔵、吉田鋼太郎
エグゼクティブプロデューサー:桑田潔(テレビ朝日)
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:貴島彩理(テレビ朝日)、神馬由季(アズバーズ)、松野千鶴子(アズバーズ)
脚本:徳尾浩司
演出:瑠東東一郎、Yuki Saito、山本大輔
音楽:河野伸
制作著作:テレビ朝日
制作協力:アズバーズ
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/ossanslove-inthesky/

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