アニー賞ノミネートから考える、2019年アニメのトレンド 『天気の子』ら日本勢受賞の可能性は?

アニー賞から考える2019年アニメトレンド

ノミネート数でNetflixがディズニーを超えた

 長編作品の2部門に作品を送り込んだNetflixだが、TV部門に目を向けると大躍進と言っていい。

 TV部門の作品賞は、一般向け、子供向け、幼児向けの3つに別れている。一般向けのノミネート5作品中、3本がNetflix関連の作品、さらに幼児向け部門でも1作品、子供向け部門にも、ドリームワークス制作でNetflix独占配信の作品が1作品ノミネートを果たしており、3部門15作品のうち、Netflix作品が3分の1を占めている。監督賞などの各部門賞にも数多く顔を出しており、Netflixの関わった作品のノミネート数はディズニーの28を超え、37に達している(https://www.cartoonbrew.com/awards/analysis-netflix-overtakes-disney-in-2019-annie-award-nominations-183251.html)。

 今年のアメリカの映画賞レースは、アニメーションに限らずNetflix関連作品が猛威を振るっている。『アイリッシュマン』『マリッジストーリー』『2人のローマ教皇』などが各映画賞を賑わせており、アカデミー賞にも絡んでくると目されている。昨年『ローマ』のアカデミー賞ノミネートは大きな議論が起こしたが、今年のNetflixの勢いは昨年を上回っており、その波がアニメーション業界にも押し寄せているということだろう。

日本勢の受賞可能性は?

 さて、日本の映画・アニメファンにとって気になるのは日本勢の受賞の可能性だろう。インデペンデント長編部門では、前述の通り『天気の子』『若おかみは小学生!』『プロメア』の3本がノミネートされている。その他、TV部門監督賞候補として『ULTRAMAN』の神山健治/荒牧伸志両監督、『リラックマとカオルさん』の小林雅仁監督が選出され、TV・ストーリーボード部門で『キャロル&チューズデイ』の渡辺信一郎監督がノミネート、ベストキャラクターアニメーションビデオゲーム部門ではスクエア・エニックスの『キングダム ハーツIII』の名前もある。

『天気の子』(c)2019「天気の子」製作委員会

 日本勢で最も賞に近いのは、インデペンデント作品賞以外に監督賞と脚本賞、FX賞(元・視覚効果賞)の4部門にノミネートしている新海誠監督の『天気の子』だろうか。各部門それぞれ強敵が立ちはだかるが、北米市場で影響力の強いトロント国際映画祭に出品されたこともあって、チャンスはあるだろう。

 インデペンデント長編部門で日本勢の最大のライバルとなるのは、『失くした体』だろう。カンヌ国際映画祭批評家週間グランプリとアヌシー国際アニメーション映画祭最高賞を受賞したこの作品は、今年のアニメーション賞レースの最大の目玉と言っていい存在だ。

Netflix映画『失くした体』Netflixにて独占配信中

 今回の日本勢のノミネーションで特筆すべきは、映画部門よりもTV部門かもしれない。映画作品に関しては、これまでもスタジオ・ジブリや細田守監督や原恵一監督などがノミネート・受賞を果たしてきた実績はあるが、日本のTV作品がノミネートされることは珍しい。TV部門でノミネートを果たした3作品に共通するのは、いずれもNetflixで配信されているということ。Netflixの躍進が日本アニメにも恩恵をもたらしたと言えるのかも知れない。

 今年のアニー賞の授賞式は現地時間の1月25日(土)。日本勢の活躍も気になるところだが、受賞結果でもNetflixがリードすることになるかどうか注目だ。その結果いかんでは、今後の米国アニメーション業界の勢力地図が塗り替わるきっかけとなるかもしれない。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■公開情報
『天気の子』
全国東宝系にて公開中
声の出演:醍醐虎汰朗、森七菜、本田翼、吉柳咲良、平泉成、梶裕貴、倍賞千恵子、小栗旬
原作・脚本・監督:新海誠
音楽:RADWIMPS
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:田村篤
美術監督:滝口比呂志
(c)2019「天気の子」製作委員会
公式サイト:https://www.tenkinoko.com/

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