一世を風靡したグループから輝かしい転身 2019年版、 元アイドル女優の勢力図

元アイドル女優の2019年勢力図

勢いづく“公式ライバル”を迎え撃つ「48グループ」

前田敦子(c)2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO

 現在の“元アイドル女優”の勢力図で、トップの地位に立っているのは前田敦子ではないだろうか。AKB48を国民的人気グループにのし上げた立役者でもあり、卒業後も出演作が後を絶たない。もはや“元アイドル女優”というレッテルからも卒業しようという勢いだ。この2019年には公私ともに充実した1年だったであろう前田は、黒沢清監督の国際共同制作作品『旅のおわり世界のはじまり』で主役を務めたほか、5本の映画に出演。第11回TAMA映画賞の最優秀女優賞も受賞し、年明け以降に続々発表される各映画賞でもセンターを飾る可能性が充分であろう。

 他にも元AKB48グループ組では、『3年A組ー今から皆さんは、人質ですー』(日本テレビ系)や大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(NHK総合)、さらにはアニメ映画『きみと、波にのれたら』と上半期に出演作が続き、結婚と出産も発表する充実一途の川栄李奈。ブレイクの登竜門である朝の連続テレビ小説『なつぞら』(NHK総合)でヒロインの同僚を演じた渡辺麻友、そして2018年春にNGT48を卒業し、卒業後初の主演映画『映画 としまえん』が公開された北原里英と、黄金時代のAKB48を支えたメンバーが徐々に女優としての頭角を現しはじめているのは見逃せないところだ。

「乃木坂46」「AKB48」、二大グループに挑むのは……

今泉佑唯(c)「酔うと化け物になる父がつらい」製作委員会

 前述した2つの大きな勢力に真っ向から立ち向かうのは、やはり乃木坂46と同じ「坂道シリーズ」でありながらも一線を画す欅坂46だろうか。まだ卒業メンバーは多くない中で、昨年秋に同グループを卒業後、舞台やモデルなど様々なフィールドで着々と積み上げてきた今泉佑唯が、このところ急激に勢いを増している印象を受ける。10月クールには深夜枠ながらも2本の連続ドラマに出演。年明けには出演映画『酔うと化け物になる父がつらい』が公開され、主演舞台『あずみ〜戦国編〜』も控えている。2020年に確実に大化けする逸材ではなかろうか。

 他にも“元アイドル女優”といえば、ご当地アイドルグループRev. from DVLの解散とともに女優として急成長した橋本環奈も2019年には本格化し、元ももいろクローバーの早見あかりも2021年公開の『シン・ウルトラマン』への出演が決定。元SUPER☆GIRLSの浅川梨奈は2019年だけで9本の出演映画が公開されるほどの引っ張りだこな状態となっており、同グループ出身者では舞台をメインに活躍つづけている前島亜美も気になるところだ。

 また、女優と並行してアイドル活動を行っていた経歴を持つ葵わかなも、2019年にはミュージカルに挑戦。来年には『アナスタシア』で主演を飾り、映画化される『キャッツ』の日本語吹替え版も務めるなど同年代の若手女優では群を抜いてそのマルチな才能を発揮している。そして元さくら学院のメンバーだった三吉彩花も、主演映画『ダンスウィズミー』が海外の映画祭で高評価を獲得し、2020年にはホラーヒロインを務める『犬鳴村』が待機。今後ますます増え続けていくであろう“元アイドル女優”は2020年以降に熾烈を極め、この界隈だけで戦国時代に突入することだろう。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

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