『まだ結婚できない男』は前作と何が違う? 女性キャスト総入れ替えで変化した「独身男女」の描き方

『まだ結婚できない男』は前作と何が違う?

 13年前、仕事ができて見映えも悪くない建築家・桑野信介(阿部寛)の独身道を描き、人気を博した連ドラ『結婚できない男』がリアルに13年後の設定で『まだ結婚できない男』(カンテレ・フジテレビ系/火曜9時〜)として帰ってきて2か月。前作では、桑野と同じく仕事ができて見映えも悪くない医師・早坂夏美(夏川結衣)とうまくいきかけたにもかかわらず、タイトルどおり、13年経ってもまだ結婚できない(してない)桑野の前に、仕事ができて、見映えも悪くない(こればっかり)弁護士・吉山まどか(吉田羊)が現れ、桑野は夏美のときと同じく、彼女をにくからず思いつつも素直になれないまま日常が続いていく。

 11月26日放送の第8話では、後輩・村上英治(塚本高史)の結婚式のスピーチで、すったもんだの末、飾らない素直な後輩を想う気持ちを語り、登場人物も視聴者をもじわっとさせた。いつだって厭味ったらしくなんでもかんでも批判する取り付く島もない桑野の意外な人情がにじみ出たこと、まどかからその結婚式の楽しい写真を送ってもらった桑野がSNSに投稿したのは、まどかがブーケに飛びついているもので、それに「いいね」がたくさんついて悦に入る桑野の表情もいい後味を残した。

 『まだ結婚できない男』で桑野はネットを活用、エゴサーチをしたり、婚活アプリを利用したり、SNS投稿をはじめたり(すごく凝った写真を撮るところが桑野らしい)している。そんなふうに時代の変化はあるも、基本、桑野は変わっていない。住んでいる分譲賃貸マンションも、生活っぷりも偏屈な性格も変わらない。変わったのは年齢と建築家としての世間的な評価が上がっていることくらいだ。あとは、仕事ができて、見映えも悪くない建築家・桑野が、同じく仕事ができて、見映えも悪くない女性と互いに憎からず思いながらも素直になれないじれったさを描くパターンはそっくり同じ。桑野のマンションの隣に住む女性がいることも同じ。前作では田村みちる(国仲涼子)、続編では女優の卵・戸波早紀(深川麻衣)。ふたりはパグ犬を飼うところまで同じである。ちなみに、前作の8話を見返すと、桑野が預かったパグを夏美がさらに預かって、散歩の途中で首輪が外れていなくなってしまい必死で探し、水の中に入るほどの愛情を見せてしまう桑野の隠れた人情が描かれていた。続編8話のスピーチからにじみ出る桑野の人情と同じパターンである。話の流れまで同じなのだ。脚本家の尾崎将也と演出家陣が同じだけあってそこはブレていない。

 続編ではほかに、離婚したばかりの雇われカフェ店長・岡野有希江(稲森いずみ)が登場し、彼女が少し桑野に好意的である。それは前作の桑野の同僚・沢崎摩耶(高島礼子)のポジションに近いが、長年の仕事の同僚という関係の摩耶のほうが有希江より強い。

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